予(あらかじ)め、あ~してこ~して…と考えていても、不測の事態でうっかり忘れることがある。それでも、その事態にめげず、なんとかしよう! と努力するのが人の妙味(みょうみ)だ。^^ その努力で、うっかりミスは帳消しとなり、忘れる・・と、まあ話はこうなる。 このあっかりだが、もちろん人によりけりで、まったくうっかりしない人も多い。ただ、うっかり忘れる人がいないと、世の中の物事は面白みに欠け、変化がなくなるのだから不思議だ。^^
とある町の役場である。
「君は、ほんとによく忘れるねっ!」
「いやぁ~それほどでも…」
課長の底鍋(そこなべ)の前に立たされた課員の蓋手(ふたて)は、褒(ほ)められた…と、早とちりして謙遜(けんそん)した。
「馬鹿か、お前はっ! 誰が褒めてるんだっ! 怒ってるんだよっ、私はっ!!」
「すみません。つい、うっかり…」
「そうなんだよっ! そのうっかり忘れる君を叱ってるんだよ、私はっ! 断じて褒めてんじゃないんだからなっ!」
「はっ! その点はもう、十分に分かっております…」
「ほんとに分かってんだろうねっ! 次、忘れたら私は本当に怒るよっ!」
「ということは、今は怒っておられないんでっ?」
「馬鹿野郎! 怒ってるよっ! 怒ってる、がだっ! まあ、台風にもなってない熱帯低気圧だっ!」
「熱帯医気圧ですか…。被害が出ないきゃいいんですがっ!」
「何を言っとるんだ、君はっ!」
「どうも…。ついうっかり、去年の台風20号が…」
「ああ、あれは酷(ひど)かったな。私が家も床下浸水だっ。…馬鹿っ! そんな話をしてんじやないっ!」
底鍋は興奮のあまり、重要な会議があることを、うっかり忘れていた。
うっかり忘れることは誰にもあり、そう目くじらを立てるほどのことではないようだ。ただし、程度はある。^^
完