国の決まりだから仕方がないが、税金はやんわりと命令するでなく人々に近づいてくる。忘れることが出来ない決まりだから和(なご)み心も消え、実に怖(こわ)ぁ~~い存在だ。^^ とある税務署である。大富豪(だいふごう)の主人、合浴(ごうよく)はドケチで、税金の申告がどうすれば安くつくか…と、毎年、思っている強(したた)か者だった。
「合浴さん! 今年も、じっくり調べさせてもらいますよぉ~~っ!」
税務署の正道(まさみち)は合浴の顔をジィ~~っと見入り、ニンマリと笑った。
「そ、それは、ないっしょ!」
「ないっしょ! って、あんた内緒(ないしょ)にしてる所得、他にあるんじゃないっすかっ!?」
「う、上手(うま)い! 実に上手いダジャレだっ!」
「感心して、どぉ~すんっすかっ! 税金は、キッチリ納めていただきますからねっ! それにしても、毎年、あなたの家だけ特別査察ですよっ! ほんとに困った人だっ!」
「私は、ちっとも困ってませんがねっ!」
「また、そういうことをっ! あんたとはこれからも長い付き合いになりそうだ…」
「いや、それは、ないっしょ! 私、外国で暮らすことになりましたからっ!」
「えっ! それは本当ですかっ!」
「ホントもなにも…。コントやってんじゃないっすからっ!」
「ぅぅぅ…それは攣(つれ)れないっ! 私、あなたと毎年、こうしてお話するのが楽しみだったんですからっ!」
「楽しみって…。それじゃ、税金は去年並みということで、話に応じてくれますかっ!?」
「ソレとコレとは…」
「まあ、去るも残るも、そちらの出方次第ということにしますが…」
「ウッ! 分かりましたっ! 公務の手抜きは出来ませんが、穏便(おんびん)にコトを運ぶことにはいたしましょ!」
「穏便ねっ! 話が分かる人だっ、正道さんはっ!」
「ははは…あんたとは若い頃から、もうかれこれ二十五年の付き合いですからね…」
二人は、そのあと毎年のように世間話をしてね毎年のようにスゥ~っと別れた。
納税の苦を忘れる税金話は、まあこの作り話 [フィクション ]くらいだろうから、それが実に残念である。^^
完