水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

忘れるユーモア短編集 (38)連休

2020年05月22日 00時00分00秒 | #小説

 連休は、忘れようとしても誰も忘れることはないだろう。特に、大型連休ともなれば、尚更(なおさら)に違いない。^^ 何もしない人でも、気分的に仕事の憂(う)さを忘れる期間でもある。連休が書き入れ時(どき)の方々には関係ないか? といえば、実はそうでもなく、気分的に普通の日とどこか違うのが連休なのである。連休・・という言葉には、どこかにそんなオーラを発散する力が秘められているのだ。^^
 連休さ中の、とある動物園である。大勢の家族づれが園内を蠢い(うごめ)ている。そんな中、疲れたのか、ひと組の家族がベンチにへたり込んだ。
「連休は、疲れるなあ~」
「そうね…」
「ママ、お腹(なか)すいたっ!」
「弱ったな…。あそこの売店、混んでるぞ」
「そんなこともあろうかと、…これっ!」
 母親は手持ちのバスケットを開け、手作りサンドウイッチを見せた。
「おっ! お前、なかなか気が利くなっ!」
「フフッ! 忘れる訳(わき)ゃないでしょ、連休だろうがなんだろうが、食べることは…」
「確かに、そうだなっ! 食欲は連休に勝つか、ははは…」
 父親は食べる話をしているうちに連休の疲れを完全に吹き飛ばした。
 連休の疲れは、食欲によって消えるようだ。^^
  
                                  


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