今日も国際関係アナリスト・北野 幸伯さんのメルマガからお伝えします。
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全世界のRPE読者の皆さま、こんにちは! 北野です。
香港で6月9日、中国本土への容疑者引き渡しを可能にする
「逃亡犯条例」改正案に反対する大規模デモが起こりました。
メルマガにも書きました。↓
https://www.mag2.com/p/news/401466
あの話、その後どうなったのでしょうか?
動きを追ってみましょう。
まず、デモと警察の衝突がありました。
<「逃亡犯条例」改正に反対、香港で中国返還後最大規模のデモ 警察と衝突も
6/10(月) 14:16配信
【6月10日 AFP】香港政府が目指している「逃亡犯条例」の改正に反対する大規模デモが9日、香港で行われた。デモは特に事故もなく行われたが、終了後の10日未明に一部の参加者が暴徒化して警察と衝突した。>
映像もあります。↓
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190610-00010000-afpbbnewsv-int
そして、香港行政長官キャリー・ラムさんは、「逃亡犯条例」の改定延期を決めました。
<「逃亡犯条例」の改正延期、香港行政長官が発表 6/15(土) 16:41配信
【AFP=時事】(更新)香港の行政トップである林鄭月娥(キャリー・ラム、Carrie Lam)行政長官は15日、香港で身柄を拘束された容疑者を中国本土に引き渡すことを可能とする「逃亡犯条例」改正を延期すると記者会見で発表した。>
キャリー・ラムさんは、もちろん中国政府の意向通りに動いたのでしょう。
<SCMPによると、林鄭長官は14日夜に顧問らと緊急会合を開いた一方、中国当局者も香港に隣接する深セン(Shenzhen)で行き詰まりとなった事態の打開策を検討していたという。>
(同上)
これは、「大きな譲歩」に思えます。
しかし、16日に今度は「200万人デモ」が起こりました。
<香港デモ再び100万人規模か 条例撤回とトップ辞任要求 共同 6/16(日) 17:40配信
【香港共同】香港民主派団体は16日、中国本土への容疑者引き渡しを可能にする「逃亡犯条例」改正案の撤回と林鄭月娥行政長官の辞任を求めるデモを香港中心部で実施した。
香港のインターネットメディア「香港01」はデモ参加者が、103万人(主催者発表)となった9日のデモの規模を超えそうな勢いだと伝えた。>
(@この記事では「100万人」とありますが、主催者によると「200万人」だそうです。)
彼らは何を目指してデモをしているのか?
・「逃亡犯条例」改定の「延期」ではなく、「撤回」を求めている
・行政長官キャリー・ラムの辞任を求めている
ところで、キャリー・ラムさんは「延期」を発表したわけですが、これでは不十分なのでしょうか? デモ主催者(民主派団体の「民間人権陣線」)としては、不十分ですね。
なぜ?
「延期」ってなんでしょう?
「延期」している間に、香港行政長官は、どう動くでしょうか?
どんなデモでも、「中心」があります。
デモのリーダー達を買収したり、脅迫したり、捕まえてしまう。
そうすると、中心を失ったデモは、力を失ってしまう。
「法案延期」の意味は、「体制を整えて再チャレンジしますよ」という意味。
だから、「撤回せよ!」「キャリー・ラムはやめろ!」というデモになるのですね。
▼アメリカのシナリオ
アメリカは、香港情勢をどう見ているのでしょうか?
<米、中国介入なら制裁検討も=香港デモ対応でけん制 2019年06月15日09時06分
【ワシントン時事】ロイター通信によると、米政府高官は14日までに、香港の「逃亡犯条例」改正への抗議デモに中国が直接介入するなどした場合、米国が制裁を検討する可能性があるとけん制した。
一方、香港に貿易やビジネス分野で中国本土と異なる特別の地位を認めた米連邦法について、「中国による劇的な動き」がない限り、見直されないだろうとの見通しを示した。
同高官は、香港情勢を受けた米国の対応について「中国の動き次第だ」と指摘。
制裁を検討するケースとして、中国が軍を投入し、香港の警察に代わって実力でデモ隊を鎮圧するといった事態を挙げた。米中の貿易交渉が、香港に関する米国の方針に影響を及ぼし得るとも説明した。 >
<制裁を検討するケースとして、中国が軍を投入し、香港の警察に代わって実力でデモ隊を鎮圧するといった事態を挙げた。>
これって、「内政干渉」の気がしますが、ありえますね。
天安門事件の時も、制裁になりましたから。
これからもデモがつづいて、香港警察だけでは手に負えなくなった。
中国政府は、軍を投入して鎮圧した。
アメリカは、「中国は、自国民を大虐殺した!!!」と非難し、
対中国制裁網を築こうとするでしょう。
欧州は今、アメリカと中国の間で揺れています。
しかし、天安門並みの虐殺が起これば、制裁に参加することになる。
そうなったら、日本ももちろん参加すべきですね。
アメリカの見通しは、こんな↑感じでしょう。
中国だって、そんなこと想定できる。
だから、なかなかデモに対し、強気に出れない。
それで、中国政府は困ってしまいます。
・デモを弾圧すれば、「天安門の再来だ!」と非難され、制裁を科されることになる
・そうなれば、米中覇権戦争で、アメリカが圧倒的に有利になってしまう
・しかし、デモを放置すれば、どんどん要求がエスカレートしてしまう
難しい局面です。
中国政府は、どんな決断を下すのでしょうか?
しばらくしたらわかるでしょう。
---owari---
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