今日も国際関係アナリスト・北野 幸伯さんのメルマガからお伝えします。
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全世界のRPE読者の皆さま、こんにちは! 北野です。
私が少子化問題の深刻さを認識したのは、8年ぐらい前のことです。
一時帰国して、長野の実家に行きました。
地方は、近所同士のつながりが濃いのです。
ある日、町内会で「川そうじ」をやることになった。
その時、父親の体調が悪く、「よしのりいってくれ」となったのです。
私が川掃除にいくと、町内の人たちが「お!若いのがきたぞ!」といいました。
私は、「若くないです。45歳です」と返します。
すると、衝撃的な言葉が返ってきたのです。
「うちの町内に、50歳以下は一人しかいないからね」
私「!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
話を詳しく聞いて見ると、我が故郷の町にいる「50歳以下」とは、小学生の女の子だそうです。
そして、その子の両親は50代。
ちなみに私の実家は地方ですが、駅から徒歩5分ぐらいにあり、「ド田舎」という感じではありません。
しかし、この惨状。
日本には、もっとひどい状態の場所が、山ほどあるだろうと思いました。
さて、前置きが長くなりましたが、今日は読者の斎藤様からのメールをご紹介させていただきます。
大変興味深い内容ですので、是非ご一読ください。
【 メール転載ここから▼ 】
<北野様
ご無沙汰してます。
と申し上げても、覚えておられないでしょうが、
何年か前か、北野さんの新刊本の感想を書いて送ったものです。
門前仲町に住む斎藤といいます。
三人の子供がすでに成人しております。
今年で還暦を迎えます。
いつも、RPEと裏RPEを楽しみに読ませていただいております。
北野さんに触発され、首相官邸にメールを打ったこともございます。
それで、この度も官邸にメールを打とうと思ったのですがその前に、北野さんにメールを打たせていただきます。
日本の課題の一つは少子化であるということに異論を持つ人はいないと思います。
危機的なほどに子供が少ない。ま、お隣の韓国ほどではないですが、、
僕の実体験でお話しします。
僕の実家は徳島県鳴門市です。
そこで18歳まで暮らし、大学生活を東京で送り、そのまま就職し、以来東京で生活をしております。
僕の家庭の事情で、両親に東京に来てもらうことになり、いまは両親も東京で、孫たち(つまり僕の子供たち、といってももう30歳前後ですが)といっしょに住んでいます。
両親は息子と頻繁に会え、かつ毎日孫と安心して暮らしており、その状況に満足しているようです。
大変ありがたいことです。、
そんな鳴門市の実家ですが、だれも住んでいなく、かつ今後の利用予定もないので、売ることにしました。
そのために、建物を解体する必要に迫られました。
そこで解体業者を手配し、必要最低限のものを持ち帰るべく、先日、実家に行きました。
実家に行きましたというのも変ですが、寝泊まりできる状態ではないのでこんな表現になってしまいます。
その実家で2日間で通算10時間ほどの整理作業をしました。
そこでを改めて少子化の実態に驚いたのです。
何に驚いたのか?
それは、作業している時間中、家の外は静かだったということです。
それがどうしたの?と思われるでしょうが、
僕が住んでいた頃は、外で子供の声がしたものです。
それが、いまでは、全く子供の声がしないのです。
昔はうるさいくらい、声が聞こえていた。
ところがいまでは、子供はおろか、だれの声もしませんでした。
そりゃ、空家も増えますよ。
少子化問題と空家問題の縮図をみた思いです。
長年、お世話になったこの家、このあたりの様変わりの姿にはショックをうけました。
このような事例は全国にたくさんあることなのでしょう。
確かルトワックさんの何かの本で読んだんですけど、
「子供がいなくなる国の安全保障を議論してみたところで、虚しい。」
まったくその通りですよね。
最近では、イーロンマスクさんも日本の少子化を心配してくれているし。
などど、外国の人に心配してもらっている場合ではありません。
北野さんが言われるように、少子化は解決できる課題なんですから。
フランスもロシアも、出生率は増えましたね。
イスラエルは確か2.0以上ですよね。
(ユダヤ人を増やさなきゃっていう使命感があるんでしょうが、、)
解決策を見出すためには、その原因を見つけなければならない。
その原因は一つではないでしょうが、一度にいくつも考えられませんので
ひとつに絞ってみます。
前提として、このようなものを想定します。
1)生涯にわたって子供を持たない女性が、増えている。
2)結婚した女性が産む子供の数は変わっていない。
1)については、
生涯、子供を持たない女性の数は、昔は20人にひとりくらいであった。
いまでは、4人に一人くらいの割合です。
そして出生率は、昔は2.0を超えていたが、今では1.4を下回っている。
とすれば、少子化を招いている原因の一つは、生涯子供を持たない女性の数が増えていることが挙げられるだろう。
次に2)が正しいとすれば、このように言い換えられる。
つまり、結婚する男女が減っているということ。
もっと言えば、結婚しようとする男が減っているということもできます。
でも、本当に我々男どもは、結婚したくないのでしょうか?
自ら結婚しないという選択を積極的にしているんでしょうか?
確かに、今は、娯楽がたくさんあり、一人でも楽しく暮らせることはよくわかります。
積極的に独身を貫く男も増えたのでしょう。
そこで、30歳から35歳までの男の未婚率を調べてみました。
2010年のデータですが、
1970年;11.7%
2010年;47.3%
つまり、40年で4倍も、この年齢の男が結婚しなくなった。驚きです。
この傾向は今も変わってないと思います。
では、なぜ結婚しないのか?
現在、約600万人の男が、年収200万円以下です。
これでは結婚したくてもできないし、相手の女性も、この年収では結婚を躊躇するでしょう。
では、この600万人が年収400万円になったらどうか?
プロポーズする男が増えることは間違い無いと思うんですが、いかがでしょう?
そしてそのプロポーズが成功すると、家庭をもつ男女が増え、結果として、子供の数が増える(=生涯、子供の数がゼロの女性の数が減る)と思うのです。
とすれば行き着くところは、問題は適齢期の男の年収が低いということとなり、
少子化の解決策の一つとして、適齢期の男の年収を上げることが肝要だということになろうかと思います。
言葉を変えると中間層を復活させるということでしょうか?
グローバリズムが進んで、中間層が没落してしまいました、
でもグローバリズムには限界があることが、2008年のリーマンショックで明らかになり、
脱グローバリズムの兆しも見えている。
また、地方への工場立地(熊本県へのTSMCの工場建設)も進む気配です。
少子化を解決する方法としてのひとつの結論は、
北野さんが今までの著作で主張されてきたことと同じになると思います。
つまり、1)まずは、政府が需要不足(=デフレ)を脱却すべく、投資する。
そうすればGDPが増える。
需要が牽引するマイルドなインフレになれば、企業の設備投資も増え、
GDPの伸張が継続する好循環が生まれる。
そうすれば、給与も上がる。
2)内国企業であるか外国企業であるかを問わず、地方に工場や事業所を立地しようとする企業に対して、税の優遇や補助金などのインセンティブを用意する。
インセンティブに誘発されて地方に職場が増える。
こうなれば、北野さんの言われる通り、職を求めて地方に引っ越す人も増える。
そうすれば、東京への人口一極集中が緩和され、地方居住者が増える。
コマツの例でもあるとおり、地方の方が、家を持ちやすく、暮らしやすい。
東京よりも地方の方が、子供を産んで育てやすい環境がある。
3)北野さんが言われるように、子供を作ってくれる家庭に、大きな優遇を与える。
教育費を無償にすることは言うまでもありません。
上の3つの組み合わせで、地方で、婚姻者が増え、子供が増える。
副次効果として地方が活性化される。大地震発生時のリスク分散にもなる。
最後になりましたが、これが一番重要でかつ始まりのような気がするのですが、
日本の100年後という姿を描いた時に、子供を再定義し、その定義を国民みんなで共有することが必要だと思います。
世界にも稀で外国人も憧れるような自然、歴史、伝統および国体をもつ国、
先進国の条件である生産能力(資本、設備、技術および人材)を持つ国、
このような国であり続けるために、子供が果たす役割とは何であるのかは、
我々日本人すべてがはっきりと意識し、常識にするのです。
子供を育てることは体力もカネも時間も必要です。
子を産み育てることは一大事業なのです。
「子供は国の宝です」ということに、異論を挟む人は少ないと思いますが、
なぜ子供が宝なのか、どんな宝なのか、子を産む育てるという事業とは何かを定義する必要があるのです。
僕はこんな社会に住みたいと思っています。
子供をつくる家庭が尊敬される、感謝される、優遇される。
また子供を持つ家庭の両親は、誇りと責任を持ち、日本の宝を育てている。
そして宝である子供は、十分な教育機会を無償で与えられ、
いわゆる「立派な大人」になり、子供をもつ親になる。
日本人一人一人が、我が国日本のための子供の役割、ミクロではなくマクロ的な意味での子供の役割をもう一度考える。
そしてその役割を国民全員で共有する。
いろんな少子化対策はあるでしょうが、まずはここから。
そんなふうに思います。
ありがとうございます。 >
【 メール転載ここまで▲ 】
ここから北野です。
斎藤様、貴重なご意見、ありがとうございました!
---owari---
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