子供たちの姿も見てみよう。モースはこう書いている。
世界中で日本ほど、子供が親切に取扱われ、そして子供の為に深い注意が払われている国はない。ニコニコしている所から判断すると、子供達は朝から晩まで幸福であるらしい。彼等は朝早く学校へ行くか、家庭にいて両親を、その家の家内的の仕事で手伝うか、父親と一緒(いっしょ)に職業をしたり、店番をしたりする。彼等は満足して幸福そうに働き、私は今迄(いままで)に、すねている子や身体的な刑罰(けいばつ)は見たことがない。・・・・・
小さな子供を一人家へ置いて行くようなことは決して無い。彼等は母親か、より大きな子供の背中にくくりつけられて、とても愉快(ゆかい)に乗り回し、新鮮(しんせん)な空気を吸(す)い、そして行われつつあるもののすべてを見物する。
日本人は確かに児童問題を解決している。日本人の子供ほど、行儀(ぎょうぎ)がよくて親切な子供はいない。また、日本人の母親ほど、辛抱(しんぼう)強く、愛情に富み、子供につくす母親はいない。だが、日本に関する本は皆、この事を、くりかえして書いているから、これは陳腐(ちんぷ)である。
(エドワード・S・モース著 石川欣一訳『日本その日その日』平凡社より)
「日本に関する本は皆、この事を、くりかえして書いている」という指摘の例証として、イザベラ・バードの記述を挙げておこう。
私は、これほど自分の子どもをかわいがる人々を見たことがない。子どもを抱(だ)いたり、背負(せお)ったり、歩くときには手をとり、子どもの遊戯(ゆうぎ)をじっと見ていたり、参加したり、いつも新しい玩具(がんぐ)をくれてやり、遠足や祭りに連れて行き、子どもがいないといつもつまらなそうである。・・・・・
彼ら(著者注:子どもたち)はとてもおとなしく従順(じゅうじゅん)であり、喜んで親の手助けをやり、幼い子どもに親切である。私は彼らが遊んでいるのを何時間もじっと見ていたが、彼らが怒(おこ)った言葉を吐(は)いたり、いやな眼つきをしたり、意地悪いことをしたりするのを見たことがない。
(イザベラ・バード著 高梨健吉訳『日本奥地紀行』平凡社より)
---owari---
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