このゆびと~まれ!

「日々の暮らしの中から感動や発見を伝えたい」

間違っている日本の教育

2021年05月31日 | 政治・経済
そもそも、今の日本における大学教育は、アングロ・サクソンの理屈を直輸入して成り立っており、それを学んだ者が優秀だとされています。中には、学生に純粋なアングロ・サクソンの流儀を植え付けることを目標にし、自慢している大学があるほどです。

しかし、アングロ・サクソンの経済書をいくら読んだところで世界のほんとうの姿は見えてきません。
世界経済がアングロ・サクソンの理屈だけで成り立っているのなら、せいぜいありがたがって読めばいいでしょう。

しかし、経済はそんな単純なものじゃありません。様々な人種、様々な文化、様々な歴史を持つ73億人以上の人々の生活の上に成り立っています。アングロ・サクソンの理屈だけで動くはずはないのです。

そもそも、大学教授の中でいい論文を書く人は、勉強ばかりしているわけではありません。映画をたくさん観ている人とか、絵やクラシック音楽が好きな人とか、そういう人が案外いい論文を書いています。

ところが、それがアングロ・サクソンの理屈から外れていると学界では認められない。それが、経済学学者はいても経済学者がいないという、日本の大きな問題点となっているのです。

(統計で経済を語る愚)
私は、30年前に日本経済はこれからどうなるかと考えて、「これからは製造業じゃなくてサービス業が伸びるよ」と言ったことがあります。

そのとき、私の意見に賛同する人は少なくありませんでした。問題なのは、多くの人が、たとえば「百貨店の売上高がいくら増えている」などと表面的な数字を見て満足していたことです。

「じゃあ、百貨店で売上が伸びている品物は何なんだ。日本人は結局何を買っているんだ」ということまでしっかり検証する人はほとんどいませんでした。

それを私が指摘すると、今度は統計数字を持ち出してあれこれ解説しようとする。だけど、その統計をつくった人は誰なんですかということです。

そうした統計なんて、頭の固い、いわゆるエリート官僚たちがアングロ・サクソンの理屈に則ってつくっているものにすぎません。そんな数字がほんとうの判断材料になるはずはないのに、それを持ち出して自分の論理を補強しようとするのです。

結局ほんとうに売れるということがどんなことなのか、きちんと言える人なんて、皆無だったのです。私は言いました。

「百貨店で何が売れたかなんて統計を見たって意味がない。そんなもの全部衝動買いに決まっている。デパートやスーパーに行ってモノを買っている人の多くは、実はその寸前まで自分が何を買おうとしているのかわかっていない人であり、思わず買っているにすぎない。そんな数字を見て経済を語るのは非学問的である。それより、生活の場でほんとうに買い物をしている人をよく見ろ」と――。

それと同じようなことを言っていた人がいました。たとえば早稲田大学名誉教授の鳥羽欽一郎さんがそうです。
鳥羽さんは、学生のときは神田に行って、それこそ映画ばかり観ていたそうですが、「確かに、流通の本は読んだ。アメリカの学者の本も読んだよ。だけどそれで学説を書いているわけじゃない」と言っていました。私はほんとうに経済を論ずるなら、そうあるべきだと思います。

(日下公人著書「『日本大出動』トランプなんか怖くない(2016年6月発刊)」から転載)

---owari---
コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 五郎丸に見る日本人の強さ | トップ | ほんとうに必要な情報は現場... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

政治・経済」カテゴリの最新記事