① ""若い星のまわりで見つかった「衛星を作る」周惑星円盤””
2019.07.12
📹 アルマ望遠鏡が観測した、地球から約370光年の位置にある惑星系PDS 70の塵の分布。 Credit: ALMA (ESO/NAOJ/NRAO); A. Isella.
今回観測された若い惑星系PDS 70は、地球から約370光年の位置にあります。最近、天文学者たちはこの星のまわりに木星のような2つの巨大な惑星の存在を確認しました。この発見は、ヨーロッパ南天天文台の超大型望遠鏡VLTで行われ、惑星に引きつけられる水素ガスが放つ光が検出されたのです。
今回のアルマ望遠鏡での観測では、この星のまわりに浮かぶ、大きさ0.1ミリメートルほどの小さな塵(ちり)が放つ電波をとらえました。
アルマ望遠鏡による観測結果とVLTによる可視光赤外線観測の結果を合わせると、若い星PDS70のまわりにあるふたつの惑星のうち、少なくとも外側に見つかった惑星のまわりには、複数の衛星を生み出せるほどの質量を持つ塵円盤があることが明らかになりました。
「私たちは、初めて、「周惑星円盤」の決定的な証拠を目にすることができました。これは、現在の惑星形成理論の多くを裏付けるものです。」と、ライス大学の天文学者であり、アストロフィジカル・ジャーナル・レターズの掲載論文の主著者であるアンドレア・イセラ氏は述べています。
「私たちの観測結果と他の高解像度の光学画像とを比較すると、小さな塵粒子の不可解な集合体が実は惑星のまわりの塵円盤であることがわかりました。これほどはっきりと周惑星系円盤を見ることができたのは、これが初めてのことです。」研究者たちによると、赤外線、可視光、電波の3つの異なる波長で惑星がはっきりと見られたのは今回が初めてのことです。
土星の氷の環は、太陽系の歴史の中では比較的最近に彗星や岩石天体が互いに衝突することで作られたと考えられています。一方で周惑星円盤は、惑星が作られたころの残留物であり、惑星自体と同じ原材料で作られているのです。
PDS 70の疑似カラー合成画像。アルマ望遠鏡観測データの他、VLTによる可視光画像を水色、赤外線画像を赤色で合成しています。 Credit: ALMA (ESO/NOAJ/NRAO) A. Isella; ESO.
天文学者たちは、アルマ望遠鏡のデータにより、PDS70のまわりの2つの惑星の間に違いがあることを明らかにしました。2つ惑星のうち、主星から近いほうのPDS 70bは、太陽から天王星までの距離と同じくらいの位置にあり、その後ろに塵の塊が尾のようにつながっています。「これが何であり、この惑星系にとって何を意味するのかはまだ分かっていません。」とイセラ氏は述べています。「私たちが唯一言える決定的なことは、この惑星が単独で存在しているのではない、ということだけです。」
2番目の惑星であるPDS 70cは、アルマ望遠鏡のデータで見られる塵の集合体と同じ位置に存在しています。この惑星は、赤外線と水素が出す光で非常に明るく輝いているため、惑星はすでにほぼ出来上がっていて、惑星の表面に近くのガスを吸い寄せることで成長を終えようとしていると考えられます。
この外側の惑星PDS 70cは、主星からおよそ53億kmの距離にあり、太陽から海王星までの距離とほぼ同じです。この惑星の質量は、木星の質量とほぼ同じか10倍程度であると推定されます。「もし惑星の質量が木星の10倍もあったとしたら、そのまわりには惑星サイズの衛星が形成される可能性も十分あり得るでしょう。」とイセラ氏は述べています。
アルマ望遠鏡による観測は、もう1つ重要な意味を持っています。惑星系の光学観測は難しいことで知られています。星は、惑星よりもはるかに明るく、サーチライトの隣にホタルを見つけるのと似ています。
そして、明るい星の光を取り除くのは困難です。しかしアルマ望遠鏡の観測では、そのような制限はありません。星は、ミリ波やサブミリ波をほとんど放出しないからです。「しばらく時間をおいてもう一度この惑星系を観測すれば、惑星と塵の集合体の位置をより簡単に描き出せるのです。」とイセラ氏は結論付けました。「このことは、太陽系が形成され始めた段階での惑星の軌道の性質について、私たちに独自の知見を与えてくれるでしょう。」
論文・研究チーム この観測成果は、A. Isella et al. “Detection of continuum submillimeter emission associated with candidate protoplanets”として、2019年7月11日発行の天文学専門誌 「アストロフィジカル・ジャーナル・レターズ」に掲載されました。
この研究を行った研究チームのメンバーは、以下の通りです。 Andrea Isella (Rice University), Myriam Benisty (Universidad de Chile/CNRS), Richard Teague (University of Michigan), Jaehan Bae (Carnegie Institution for Science), Miriam Keppler (Max Planck Institute for Astronomy), Stefano Facchini (European Southern Observatory), and Laura Pérez (Universidad de Chile)