① ""すばる望遠鏡 ; TOPIC 05 より遠くへ、最遠へ""
すばる望遠鏡の大きな科学的目標の一つが、遠方宇宙の探査と銀河進化の解明であることは言をまたない。すばる望遠鏡が動き出して間もなく、本格的に稼働し始めた主焦点カメラSuprime-Cam(シュプリーム・カム)は、当時の大望遠鏡の中でも屈指の広視野高感度を誇り、遠方宇宙の探査に威力を発揮した。
遠方銀河の放つライマンα輝線を検出する手法を主軸に、「最遠方銀河」の発見記録を次々と更新していたすばる望遠鏡は、2006年、遂に赤方偏移が7(距離128億8千万光年)に達する銀河を発見した。この時点で遠方銀河の距離の遠いものから数えたトップテンのうち、実に9個の銀河がすばる望遠鏡による発見であった。
- [ウェブリリース]「最も遠い銀河の世界記録を更新」―宇宙史の暗黒時代をとらえ始めたすばる望遠鏡
- [参考文献]Iye et al. 2006, Nature, 444, 186, “A galaxy at a redshift z = 6.96”
128.8億光年彼方に見つかった最遠方(当時)銀河IOK-1の可視光画像。Suprime-Cam撮影。すばる望遠鏡は「最遠方銀河」の記録を次々と塗り替えてきた。(クレジット:国立天文台)
すばる望遠鏡は初期に観測所プロジェクトなるものを立ち上げ、数十夜を使って大きなサーベイプログラムを実施した。そのうちの一つ「すばるXMMニュートンディープフィールド」プロジェクトのデータから、129億光年彼方にずばぬけて大きく明るい電離ガス雲が発見された。「ヒミコ」と名付けられたこの天体は、銀河形成初期に激しい星生成を起こしている巨大銀河だと考えられており、銀河形成の謎を解くカギとされている。
- [ウェブリリース]古代宇宙で巨大天体を発見 ―謎のガス雲ヒミコ―
- [参考文献]Ouchi et al. 2009, ApJ, 696, 1164, “Discovery of a Giant Lyα Emitter Near the Reionization Epoch”
129億光年彼方に見つかった巨大な電離ガス雲「ヒミコ」の可視光赤外線画像。Suprime-Camおよびスピッツァー宇宙望遠鏡撮影。(クレジット: M. Ouchi et al.)
もう一つの観測所プロジェクト「すばるディープフィールド」のデータからは、最遠方(距離127億光年)の銀河団が発見された。この発見により、宇宙年齢がまだ10億年ほどの時点ですでに銀河の集団である銀河団が形成されていたことが示された。
- [ウェブリリース]すばる望遠鏡が見つけた宇宙最遠方の銀河団
- [参考文献]Toshikawa et al. 2012, ApJ, 750, 137, “Discovery of a Protocluster at z~6”
127.2億光年彼方に見つかった銀河団の中心領域。Suprime-Cam撮影。◯で囲まれた赤い天体が銀河団に属すると考えられる銀河。宇宙年齢がまだ10億年にも達しない初期宇宙にすでに銀河団が存在したことを示した。(クレジット:国立天文台)
さらに、Suprime-Camの後継機であるHSCを用いた大規模サーベイによって、120億光年彼方に200個におよぶ大量の原始銀河団が発見されたのであった。
- [ウェブリリース]宇宙は原始銀河団であふれている
- [参考文献]Toshikawa et al. 2018, PASJ, 70, S12, “GOLDRUSH. III. A Systematic Search of Protoclustersat z~4 Based on the >100 deg2 Area”
約120億光年彼方における銀河の分布と原始銀河団領域の拡大図。HSCによる観測。赤い領域が将来銀河団になると予想される原始銀河団。(クレジット:国立天文台)