💴 来年7月1日から有料化が義務づけられるのは、商品を持ち運ぶために使う、石油などの化石資源からできたプラスチック製の買い物袋です。業種や規模にかかわらず全国すべての小売店が対象となり、レジ袋の価格や売り上げの使いみちは事業者みずからが決めるとしています。
ただし、植物を原料にしたバイオマスプラスチックを25%以上配合した袋や、海の中で水や二酸化炭素に分解されるプラスチックでできた袋、それに厚さが0.05ミリ以上の繰り返し使うことができる袋は義務づけの対象からは外すとしています。
🏪 コンビニなどの業界団体からは「温めた弁当や汁ものなどを持ち帰る場合は対象外にしてほしい」という要望が出ていましたが対象外にはしないということです。
👤 こうした方針について神奈川県横須賀市にあるコンビニエンスストアの経営者は賛成だと言います。店内に置かれたごみ箱には毎日、大量のレジ袋が捨てられます。渡してすぐに捨てられることも少なくなく、もったいないと感じていました。
客には「レジ袋は必要ですか」と聞くようにしてきましたが、ほかの店に比べてサービスが悪いなどと思われてしまうのではないか心配もあったということです。
店を経営する加藤雄久さん(51)は「以前に比べて『レジ袋はいらない』と言うお客さんが増えてきていると実感しているので、有料化してさらに削減を促すのはよいことだと思います。熱いものや汁物の場合はレジ袋が必要ですが、だからこそ対価として払っていただけると思います」と話していました。
消費者の意見はさまざま
コンビニに昼食を買いに訪れた20代の会社員の男性は「食べたあとに空いた容器などをレジ袋にまとめて捨てることができるのでやっぱり便利です。消費税も上がったばかりなのにレジ袋も有料化されるのは困ります」と話していました。
また、東京 丸の内で昼食どきに聞いたところ、20代の会社員の男性は「レジ袋は1日に4枚から5枚もらっていると思いますが、小さい袋だったらすぐに捨ててしまいます。環境問題を考えたら有料化するのもしかたがないと思います」と話していました。
バイオマスプラスチックで作られた袋などが有料化義務づけの対象外とされることについては、40代の会社員の男性が「プラスチックごみ全体を減らそうとしているのになぜ対象外を作るのか、理由がよく分かりません」と話し、
幼い子どもを連れた30代の母親は「対象外を設けると、消費者にとって分かりにくくなります。すべてのレジ袋を有料化するのかしないのか。どちらかにしてほしい」と話していました。
なぜ有料化に
環境省によりますと国内で1年間に出るプラスチックごみの量はおよそ900万トン。これに対してレジ袋の年間の消費量は30万トンから40万トンと試算されていて、ごみの量の3%から4%に当たります。
レジ袋がごみの多くを占めているわけではありませんが、国は生活に身近なレジ袋の有料化が使い捨てプラスチックへの意識を高める象徴的な取り組みになると位置づけています。
去年、UNEP=国連環境計画が発表した報告書によりますと日本では容器や包装に使われるプラスチックが、国民1人当たり年間およそ32キロ分ごみとなっていて、アメリカに次いで2番目に多いとされています。
また、プラスチックごみによる海洋汚染が世界的な課題としてクローズアップされたこともあって、ことし5月、国は2030年までに使い捨てのプラスチックごみを25%削減するという目標を立てました。
環境省によりますと、ヨーロッパなど20か国以上ではレジ袋を有料化したり税を課したりしているほか、製造や販売を禁止している国や地域もあるということです。
また、国内でも19の都道府県が全域でレジ袋の有料化を進めていて、このうち平成20年から有料化を始めた富山県では去年までにおよそ15億7000万枚、およそ1万6000トンのプラスチックごみを削減できたとしています。
小泉環境大臣は今月1日の閣議後の会見で「レジ袋の有料義務化を通じて、プラスチックごみの問題への理解が深まり、レジ袋に終わらない行動を生む前向きな連鎖につながってほしい」と話しました。
「バイオマスプラスチック」などは対象外
「バイオマスプラスチック」や「海洋生分解性プラスチック」で作られたレジ袋が有料化の義務づけの対象から外されることについては、課題も指摘されています。
従来のレジ袋は、石油などを原料にしていますが、バイオマスプラスチックはサトウキビやトウモロコシなどの植物の糖から作った樹脂を加工してできています。
植物は光合成の際に二酸化炭素を吸収しているため、ごみとして燃やしても地球温暖化の原因となる大気中の二酸化炭素の濃度を上昇させないと考えられるとして活用する動きが広まっています。
例えば牛丼チェーンの「松屋」は、バイオマスプラスチックを90%配合した袋を、今月中に全国すべてのおよそ1000店舗に導入する予定です。
また、海洋生分解性プラスチックは海の中で微生物によって水や二酸化炭素に分解されるとして開発が進められています。しかし、日本ではレジ袋としてはまだ実用化されていません。
こうした特殊なプラスチックから作るレジ袋の製造コストはまだ高いほか、バイオマスプラスチックの場合はごみの削減自体につながるわけではありません。
環境省などは特殊なプラスチックを義務づけの対象外としたことについて「決して無料配布を推奨するものではなく、市場のやり取りのなかで値段がついていくことを期待したい」としています。
検討会の委員からは「バイオマスプラスチックや海洋生分解性プラスチックがなぜ、義務づけの対象外となったのか消費者にどう理解してもらうかが大きな課題になる。有料ではないから使い捨ててもかまわないとならないようにしないといけない」という指摘が出ていました。
1円や5円硬貨を使用できない券売機使用の飲食店は
注文や会計を券売機で行っている飲食店ではレジ袋の有料化にどう対応するか頭を悩ませています。券売機の多くは1円硬貨や5円硬貨を使用できないからです。
このうち全国におよそ70店舗ある豚丼などを提供する店でも券売機は10円硬貨からしか使えません。もともと持ち帰りの際は容器代として10円加算しているため、レジ袋の料金もこのなかに含まれているとみなせないかと考えていますが、その場合、マイバッグを持ってきた客にはどう対応するのかという課題が残ります。レジ袋代を別途、受け取る方法も今後検討することにしています。
店を経営する「アントワークス」広報室の昆野明日香課長は「人気商品はニンニク醤油の味付けでにおいも結構出るので、そのままカバンに入れることは難しいと思います。
消費税率の引き上げや軽減税率への対応でかなり大変だったので、また来年、価格をどうするかという課題が出てくると思うと少し不安です」と話していました。
袋生産のメーカーは深刻な影響か
🏭 有料化の義務づけで深刻な影響を受けるとみられているのがレジ袋を作っているメーカーです。
今回の方針にはメーカーへの支援を検討することも盛り込まれました。
50年ほど前からレジ袋を生産している広島県大竹市にある会社ではレジ袋の有料化に取り組む自治体や事業者が増えたことなどから、この10年で販売量が7割から8割、減ったということです。
環境に配慮した製品を開発しようと、レジ袋の厚みを従来のほぼ半分にまで薄くしたりバイオマスプラスチックを配合した袋も生産したりしていますが、有料化が義務づけられれば経営への打撃は深刻だと考えています。
レジ袋のメーカーで作る「日本ポリオレフィンフィルム工業組合」によりますと、有料化を進めた自治体では需要が9割近く落ち込んだケースもあり、ここ数年で倒産や廃業が相次いでいるということです。
大竹市の会社の社長で組合の常任理事を務める中川兼一さんは「レジ袋は小売業の発展に貢献し、消費者に便利さを提供してきたと自負しています。全国で有料化が義務づけられると生きていけないということになりかねません」と話していました。
また、バイオマスプラスチックについて「原料が高いのでレジ袋の価格も高くなってしまい、十分に普及が進まない現状があります。従来のレジ袋からの転換を促すには国の支援が必要です」と話していました。
レジ袋の価格は事業者が設定
今回示された方針ではレジ袋をいくらにするかは事業者みずからが設定することになっていますが「0.1円のような無料に近い価格にすることもでき、有料化の効果がなくなる」として、国が最低価格を示すべきではないかという意見があります。
国は今後、国内外の先行事例を参考として示すということです。