※ 本日、最後の記事のUPです。
① ""2019年9月の太陽活動””
黒点相対数の変動 (13カ月移動平均)。緑線・青線・赤線はそれぞれ1996年以降の太陽全体・北半球・南半球の黒点相対数、点線 (黒) は過去の周期における黒点相対数を極小を1996年に揃えてプロットしたものです。黒点相対数が小さいときの変化を見やすくするため、グラフ縦軸の目盛りは小さい数を拡大して見せるような不等間隔になっています。
前の太陽活動サイクルから今サイクルにかけての極小は、極小になった時の黒点相対数の値が特に小さくその時期も遅れました。極小の時期が遅くなったことにより、前回の太陽活動第23周期は平均よりも長く12年以上継続したサイクルになりました。
現在の太陽活動サイクルは第24周期にあたり、太陽全面で見ると2008年末から始まって2014年に極大を迎え、その後は現在まで減少を続けています。
一方で南北別に見ると活動の非対称性が目立ち、北半球が2011年後半に極大を迎えたのに対して南半球は遅れて上昇し2014年に極大を迎えました。
その後、両半球とも次の極小に向かって黒点相対数が減少していますが、単純な減少ではなく一時的に停滞した期間があります。太陽全体での黒点相対数は2019年付近で減少が止まっているように見えますが、今サイクルと次のサイクルの境界となる極小期はまだ確定していません。 → 2019年の黒点相対数
9月の太陽:白色光 Hα線 赤外線偏光
② 9月の三鷹の黒点観測日数は30日中23日間ありましたが、このうちの20日間を無黒点日が占めました (白色光画像の9月のデータベースカレンダー)。
月平均黒点相対数で見ると、全球で1.52、北半球が 1.52、南半球が 0.00 でした。三鷹で9月観測された黒点群は1日から2日にかけての1群と、23日に日本時間の昼間、短い時間出現した1群の計2群のみで、どちらも比較的低緯度に現れた第24活動周期に属するものでした。
フレアの発生数で見ても9月は非常に低調で、米国 NOAA GOES 衛星 (※1, ※2) によるクラス分けにて、Bクラス以上のフレアが1例も発生しませんでした。今年5月前半に太陽極小期としては珍しく活発なフレアの活動を見せた後は、9月末まで4ヶ月以上にわたり、Cクラス以上のフレアが発生しておりません。太陽の磁気活動は、引き続き2017年の終わりから続く極小期の水準を維持しています。
その中でも、プロミネンスでは興味深い現象が見られました。図1およびムービー1は、国立天文台三鷹太陽フレア望遠鏡Hα撮像装置が9月19日から翌20日にかけて観測した太陽の南東のリム上空のプロミネンスと、その足元に度々現れ、膨張、上昇するバブル様の希薄に見える領域の様子です。
膨張するバブル様の領域の頂上付近の一部が突き出し、プロミネンスの濃いガスの中をさらに上昇していく様子も見て取れます (プルーム)。これらの希薄に見える領域は、他の波長で見ると、温度が周りのプロミネンスガスよりも非常に高いことが分かっています。これを含め9月に見られた様々なプロミネンスの姿を、ムービー2 (ロングバージョン) で紹介しています。
================================ ※1 NOAA: National Oceanic and Atmospheric Administration (米国海洋大気局。この機関によって、太陽活動領域に番号が振られる。) ※2 GOES: Geostationary Operational Enviromental Satellite (米国 NOAAの地球環境観測衛星。地球に降り注ぐ軟X線の総フラックスも常時モニターしている。) ================================
③ 紅炎(こうえん、solar prominence)/ wikipedia
とは、太陽の下層大気である彩層の一部が、磁力線に沿って、上層大気であるコロナ中に突出したものである。英語のままプロミネンスと呼ばれることも多い。
皆既日食の際に、月に隠された太陽の縁から立ち昇る赤い炎のように見えることから名づけられた。紅炎が赤く見えるのは、彩層と同様に主にHα線を放射しているためである。Hα線を選択的に通すフィルターを用いれば、通常時でも観測することができる。
光球上の紅炎をHα線で観測すると、波長の関係で光球よりも暗い線状に見える。この場合には暗条またはダークフィラメント (dark filament) と呼ばれている。光球上にあるかないかでこのように見え方が違うのは、紅炎の背後に光源があるかないかの違いによる(キルヒホッフの法則)。
紅炎には、数ヶ月に渡って安定に存在する静穏型紅炎と、激しく形を変え主に黒点に伴って発生する活動型紅炎の2種類がある。