http://voicee.jp/2015052911116
厳しい就職の現実
就職先がない……。
私は、10月を過ぎても就職が決まらない現実に愕然としました。
当時、大学院でガンの治療法を研究していた私は、2年間の研究成果が認められ、10月に学会で発表する機会を頂きました。夏ごろから就職活動を始めている友人達を横目に、必死で学会の準備に取り組んでいたのです。
しかし、その後に待っていた現実は予想以上に厳しいものでした。私が希望していた研究職の募集はほとんど締め切られており、関心のあった食品会社や化学メーカーへの就職は諦めざるを得ませんでした。
「あんなに熱心に研究に打ち込んだのに……これからどうすればいいの?」
それでも研究だけは続けたいと思い、技術職として他社に派遣されるアウトソーシング会社に就職することを決めました。
こんな職場では研究に集中できない
就職後、新入社員の私が派遣されたのは、食品メーカーの研究室でした。
細胞からDNAを抽出し、解析する実験を任されることになり、「研究なら正社員に負けない自信がある」と、私なりにやる気になっていました。
そんなある日、細心の注意を払って取り組んだにも関わらず、上司の予想と180度異なる結果が出ました。
「君のやり方が悪いんじゃないのか。もう一度やり直しだ!」
私の心もとない報告に対して、上司の容赦ない叱責が飛んできました。
しかし、二度、三度と実験をしても、結果は同じ。
「やっぱり同じ結果だ。報告したらまた怒られる。言いたくない。でも言わなきゃ……」
「一体いつまで時間をかけるつもりだ!君は仕事が遅いんだよ!」
見るからにイラついた上司の態度に、私はどうしていいかわからず、すっかり怖気づいてしまいました。
その後、上司の予想自体が間違っていたことが判明しましたが、この一件で深く傷ついた私は、上司との間に大きな壁を感じるようになりました。
そのうえ、他の正社員が、「どうせ派遣なんて仕事ができない」と陰口を言っているのを偶然耳にしてしまい、ショックを受けました。
「私は研究するために就職したのに……こんな職場で研究に集中できるわけがない」
研究への意欲も湧かなくなり、挫折感のなか契約期間が終了しました。
最後までやり抜くことが大事なんだ!
「次の派遣先でもうまくいかないかもしれない……」
前の会社の失敗を引きずり、私は仕事に対する不安に襲われるようになりました。
すでに幸福の科学の教えを学んでいたので、次の派遣先が決まるまでの間、自分を見つめ直してみようと思いました。
ちょうどその年に発刊され、ベストセラーになっていた『幸福の法』を開いたときのことです。
「『自分はこの会社に縁がある。自分はここに天命を得たのだ』と思うことです」
「『どのような職場であっても、そこで最善を尽くして生きていくなかにこそ、天命は出てくるのだ』という考え方をしない人は、成功することはほとんどありません」
まるで自分のことを言われているようで、ハッとしました。
仕事にやる気がなくなったのを、上司や陰口を言った正社員のせいにしていた私。そうした環境のせいにする気持ちから、前向きな努力ができなくなり、自分が希望したはずの技術職にやりがいを感じられなくなっていました。
「今自分がいる場所で精一杯やらなければ、いつまでたってもこの状態から抜け出せない。失敗を恐れず、最後までやり抜くことが大事なんだ!」
私は、次の職場では、どんなことがあっても逃げないと決意しました。
プロの技術者として自分の技術を生かしたい!
やがて、2つ目の派遣先が決定しました。私の仕事は、光学部品の接着剤の選定や、さまざまなトラブル対応です。
「この部品をしっかり接着したいから、違う種類の接着剤を2つ使いたいんだけど、大丈夫かな?」
あるとき、部品設計の担当者から、質問されました。
まったく予想していなかった質問であり、以前の私なら戸惑いを隠せない場面です。でも私は、「ここで怯んじゃいけない!」と、勇気を奮って答えました。
「私が責任を持ってお調べします」
早速、接着剤メーカーに問い合わせましたが、自分でも自主的に実験をしてみることにしました。
数日後、メーカーから「何が起こるかは実験してみないと分からない」というあいまいな返事が来ました。
既に自分で実験し、2種類の接着剤を一緒に使うと接着が弱まることを確認していた私は、「同時に使うのは避けるべきです」とはっきり答えることができました。
「えっそうなの!?製品化されてから分かっていたら、相当な打撃になるところだったよ。ありがとう」
相手に感謝され、思わず胸がジーンと熱くなりました。
「未然にトラブルを防ぐことができた!私もやればできるんだ」
次第に周りから信頼されるようになり、今では、何かトラブルが起こると、「それについては彼女に聞けば分かる」と、上司や正社員の方にも頼られるようになりました。
多くの人と協力して仕事をしていくためには、組織の一員としての責任を自覚し、与えられた環境でベストを尽くすことが大切だと実感しました。
これからも、プロの技術者として自分の技術を生かし、多くの人を幸せにできる製品づくりに貢献していきたいと思います。