【お金は知っている】新年度の景気はどうなるのか。筆者が重視するのはまず1に財政政策、2にチャイナリスク、3が金融政策である。中国情勢は日本自身の手ではどうにもならないし、金融緩和政策は効果に限界が見える。
2年前の消費税増税後、経済のゼロ成長に直面する安倍晋三政権が来年度予定の消費税再増税の先送りに加えて、大型補正予算編成に取り掛かるのは当然としても、補正の規模と中身が問題だ。
財政資金規模は国内総生産(GDP)の約5割相当だから、そのさじ加減が経済を左右するのに、歴代政権は過去20年間も、民間から税などで吸い上げた資金の一部しか民間に戻さない緊縮財政路線でほぼ一貫し、デフレを呼び込んできた。その緊縮の度合いが最も激しいのは、皮肉なことに脱デフレを掲げる安倍政権だ。
2012年12月に発足した第2次安倍政権はアベノミクスを打ち出し、異次元金融緩和政策と機動的財政出動を第1、第2の矢とした。金融緩和と財政支出の2つを組み合わせた。景気は円安・株高の追い風を受けたが、13年の実質経済成長率は1・4%にとどまった。14年は消費税増税ショックでゼロ成長、不振は15、16年にも及ぶ。
アベノミクス不発の元凶は何か。
グラフの財政資金の対民間収支はその答えを出している。政府が民間から資金を吸い上げる資金が民間向けに支出する額を上回る「揚げ超」額はアベノミクス開始とともに極端なまでに上昇した。増税した14年は10兆円余り、名目GDP比2・1%、さらに15年も10兆円弱、同2%の緊縮ぶりで、戦後の混乱期を除けば未曾有の超緊縮ぶりである。
経済学教科書の均衡財政理論によれば、増税しても税増収分をそっくり財政支出に回せば景気は支出増分だけ刺激されるという。簡単な机上計算では確かにそう演繹(えんえき)されるが、家計から所得を奪えば、消費が大幅に減るので、あてにはならない。ましてや政府は増税したうえに財政資金の支出を減らすのだから、景気は冷やされるはずだ。
財務省幹部と財務省出身の黒田東彦(はるひこ)日銀総裁は金融緩和と増税・緊縮財政のポリシーミックスで景気回復と財政再建の「二兎」を追えると首相を説いた。結果は無残である。安倍政権は緊縮路線を廃棄するしかない。
どの規模で財政資金支出を増やすべきか。デフレ前の1996年までは財政資金収支差額はゼロかまたはゼロ近かった。そんな均衡状態に戻すことは当然で、10兆円規模の財政資金支出増が必要に違いない。
待機児童、介護離職の解消のための保育士や介護士の待遇改善、低所得者対策は急がれるが、経済を成長させないと税収減の圧力で持続できず、一時しのぎのばらまきに終わりかねない。消費税減税、企業の設備投資減税、所得税減税、インフラ整備、先端的な研究開発など成長につながる分野を重点対象に財政資金を投入すべきだ。 (産経新聞特別記者・田村秀男)