まち・ひと・くらし-けんちくの風景-

建築設計を通してまち・ひと・くらしを考えます。また目に映るまち・人・くらしの風景から建築のあるべき姿を考えています。

まちキネ・活用案の比較

2021-01-13 19:13:15 | 民間建築の設計 Private Sector Building

鶴岡まちなかキネマについて活用案の比較検討を行いました。

建築的な面と、映画館運営の両面から比較しました。

本来この両面(さらには都市的、まちづくり的視点も必要です)からの十分な検討

のうえ「計画案」はつくられるべきですが、なぜか今回はキネマ1,2の取り壊し、

エントランスホールの改築というハードが何より先に決められています。

 

ともあれ、これまで市の活用案と11.29での専門家案の2案が出ていますが、11.29専門家案が

前提としていた空き工場の解体が進んでいる現状を踏まえて新たに第3,第4案を

追加しました。第3、第4の案については、下記の比較表の後ろにイメージを

添付しました。

 

 

まずハードの観点からの比較です。

 

次に文化性、持続可能性の面からの比較です。

 

 

次に映画館運営の観点からの比較です。ただ、本当のところは映画館のプロ(興業側)の視点が必要です。

シナリオ3のイメージを参考に提示します。

シナリオ4のイメージです。社協さんの事務室・会議室をCLTなどの木造で新築します。

事務室や会議室は効率よく配置できます。また使う側にも快適な空間となります。

 

また、キネマ1を映画館の空間特性を生かして介護予防室にするのであれば、大変元気老人にも職員にも魅力的なスペースが生まれると思います。

 

 

改修費も抑えられ、かつこんな楽し気な場所でフレイル予防活動ができるのなら、多くの元気老人が孫を連れてやってくるのではないでしょうか?

 

 


Ver.3.1 まちキネの持続的、創造的解決に向けて 

2020-11-21 17:34:22 | 民間建築の設計 Private Sector Building

鶴岡市からまちキネの活用案が出されました。

荘内銀行など5行の債権の対象となっている木造2棟の映画館と駐車場を買い取り、小さな方の2つのキネマを映像機能を持つ交流スペースとして地元に無償貸与するという鶴岡社会福祉協議会の英断には心から敬意を表します。また中心部に福祉の拠点ができる可能性があるということもたいへん明るい材料です。そのことも大いに歓迎です。

しかし、案の内容をよく見ると「たいへんもったいない」点が多いことに気付きます。少し視野を広げるだけで、同じお金(あるいはより少ないお金?)がより有効に使われ、関係者の皆さんに得になり、市民にとっても夢のある中心部の再生計画ができるだろうというのが私の変わらぬ思いです。

●税金でつくり、各界また海外からも評価されているキネマ建築を撤去して社協事務室にするのは大工事となり多額の工事費がかかる。

●活用案は社協さんにとっても使いにくい「間取り」となっている。また間取りに無理があるため、「残すはず」のキネマ3,4の交流スペースにも多額の改修費用(2500万円は税金を投入)が発生する。

●改修に「もったいない」費用(さらにSDG'sの観点からも問題)をかけるよりも、同じ敷地内にある大きな空き工場(鉄骨造、ここだけは荘内銀行が単独で所有)を買い取り、そこを社協の事務室にすれば広くで、将来的にも拡張の余地のある「映画芸術と福祉+α」の中心部が生まれる。

●大きな空き工場は解体するだけでも6千万円近くの費用が必要で、土地代とそれほど変わらないと思う。キネマ1,2やエントランスホールを取り壊したり、交流スペースを改修するお金で、十分買い取れると思われる。足りなければクラウドファンディングなども可能。

 

以下詳しく考え方を説明します。皆様のご理解が得られることを願っています。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


Ver.2.0 鶴岡まちなかキネマの創造的再生を考える

2020-11-15 16:53:42 | 民間建築の設計 Private Sector Building

わかりにくい記述などを修正してVer.3としてアップしました。

https://blog.goo.ne.jp/1210tokihiko/e/eb404345beb5bc0f1fd38a681e163abf

 

■大、大、中、小の4つのキネマを持つ鶴岡まちなかキネマは5月に閉館となりました。

運営会社である㈱まちづくり鶴岡も所有地と建物を売却したうえで清算されようとしています。

この危機にあたり、鶴岡市の主導のもと、関係者が協力してできた「活用方針」が明らかになってきました。

㈱まちづくり鶴岡の清算を進めると同時に小さなほうの2つの映画館の取り壊しを何とか免れよういうものです。

関係の皆様のご努力には敬意を表します。まちなかキネマを守りたいという気持ちは、鶴岡市やご関係の皆様も

私も同じだと思いました。

■しかし、建築・まちづくりの専門家の視点でみると「活用方針」の視野が狭く、そのために関係者の皆さん・市民

のみんなにとって最適な案にはなっていないことに気づきます。

ほんの少し視野を広げるだけで多くの可能性が開けることを申し上げたいと思い、このブログにまとめました。鶴岡市

の「活用方針」に反対とか賛成ということではなく、市民の皆さんと一緒に考える材料になることを願っています。

■私の言いたいことは「5.新たな考え方:敷地全体に視野を広げると三方良しの解決案」です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ここからはD,E棟が十分使えることを示す補足資料です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


Ver.1.0 鶴岡まちなかキネマの再生(旧バージョン)

2020-10-22 11:09:02 | 民間建築の設計 Private Sector Building

新バージョンで考え方と提案を更新しました。そちらをごらんいだけますか?

https://blog.goo.ne.jp/1210tokihiko/e/1038137cfac4c76d2d7e60c3b4b2b82a

 

 

鶴岡まちなかキネマ再生に向けて大切にしたいと思うことを記します。

2020.10.22

高谷時彦

 

1.文化財へ登録すること

・国登録文化財への下打ち合わせは終了済み。文化的な価値を生かした創造的改修については高い評価。推薦内容の文章も作成済み(資料提供可能です)。

・絹織物の『産業文化遺産で映画が愉しめるまち鶴岡』(資料提供可能です)にふさわしい、文化財を使った鶴岡らしい地域再生プロジェクトとする。

 

2.映画と舞台芸術をベースとした創造的再生

・鶴岡はユネスコ創造都市=文化や創造性(創造産業)を持続的開発や都市再生の推進力とする都市(ユネスコ)。

・まちの再生=創造的な場の創出、創造的に活動する人の場所づくり。質の高い環境を創出することで創造的活動をする人々の住みたいまちをつくる。学術文化都市鶴岡らしいまちなか再生のモデル。

(例)ここでの創造産業=映像文化産業、人材:T監督、W監督、H監督、映画村。映画+舞台芸術。応援して下さる多くの映画舞台関係者、まちづくり関係者・・・・。

(例)ここでの創造的活動=高水準、広いすそ野を持つ市民の舞台芸術活動、市民の文化活動、市民の支援活動。

・市民の映画鑑賞を支える高い音響性能(65回日本映画テレビ技術協会特別賞)や建築的評価(2013日本建築学会作品選奨他多数)を持つ、シアター空間を創造的に活用すること。

(➡ただ建物の外観が残ればよい、シアター空間を壊したほうが利用しやすいという考えは、建物の価値を生かした創造的解決とは最も遠いところにある)

 

3.市と地元会社の連携で敷地全体を活用

・市民の出資によるまちづくり会社がこれまで奮闘してきた(自助+国の補助金)。

・しかし、一企業の力では限界。これからは共助(コミュニティの力)、公助(自治体)が、協力していくことが必要。

・4つのシアター空間をうまく連携して活用。

(例)地元企業が商業的(マーケット規模は7,8万人/年)に2つの映画館(+α)を運用(市との長期独占契約)。

(例)2つの劇場(+α)を地域の舞台芸術活動の場として活用(市から地元企業への指定管理)。

(例)大スペースのあるD、E棟を舞台芸術の稽古場、練習場(公共施設)、創造活動のアトリエ(アートフォーラムが目指したアーティストインレジデンス)。

(例)E棟の1階はピロティとして、自由な使用が可能なまちの土間とする

・まちの再生≠個別商店の再生。公共の場、共の担い手としての商店街×(まちづくり鶴岡を継承する)まちづくり会社×公を担う自治体の共同作業。

(➡行政に「民間企業のしりぬぐいはしない」「放っておくと地元がだめになるので今回だけは助けたい」ということがあるとすれば、まちキネ再生プロジェクトの持つ公共性への無理解。市民出資会社のまちづくり鶴岡が市の支援も受けずに、公を担ってきたという事実が出発点。自治体に集まる多様な情報を整理して、きちんとした理念と方法を提示して市民と対話しながら進めていくことを望む)

 

4.お金をかけない再生

・B、C棟はそのまま活用。なるべく今ある資産を生かすというのが賢明なやり方。

・D、E棟も一部の解体を除きそのまま活用。

(➡高機能空間であるシアター空間の設えを撤去して外観だけ残すという考えは、シアター空間の文化的価値と経済的価値を無視する暴挙。床の位置(レベル)を変えるだけで、建築基準法への適合など相当大掛かりな工事費がかかる。10年前に市民の浄財と国の補助金(私たちの税金)でつくったものを壊すことに資金を費やすことは、とても創造的な解決とは言えない)

 

以上は私の思いですが、まちキネの再生を巡っては各人いろいろな意見があると思います。

一万人以上の市民が再生を願っているまちなかキネマです。オープンな議論を経て、創造的で、未来志向であること、そして江戸以来の学術文化の伝統に誇りを持つ鶴岡市民が、納得いく解決案が見いだされるよう心から祈っています。

高谷時彦

 


Tsuruoka Machinaka Kinema: a cinema complex converted from an old silk factory

2019-01-04 14:12:16 | 民間建築の設計 Private Sector Building

Tsuruoka Machinaka Kinema is a cinema complex located in Tsuruoka city, small castle town in the northern part of Japan. It was converted from an old silk factory with a wooden structure into a cinema complex by Machidukuri Tsuruoka co., a social enterprize founded by Tsuruoka citizens.

 

 Though there are few film theaters in the down town of small cities all over Japan, Tsuruoa is an exceptional one. Tsuruoka people  can enjoy seeing movie films and having a chat drinking coffee in the center of the historical district.   

 We can see the repeated trussed girders made of wood in the entrance lounge and even in the theater halls.

 

Girders are lighted by the skylight installed to admit daylight  to the entrance hall.

More detailed information from the architectual point of view can be found in the following magazines and books.

2010  June  Shinkenchiku

2010  Sept. Nikkei-architecture

2012  June  AIJ journal (Architectural Institute of Japan)

2013  Selected works of the year 2013 AIJ

2013  Magazine "Detail"

2013  August   AIJ journal (Architectural Institute of Japan)

2014  Standards of Japanese Architecture

2014  Magazine "Chiiki Souzou" Autumn vol.36

 

And we are honored to receive such awards as follows: 

2013   Anual Architectural Commendation 2013: Architectural Institute of Japan

2013   Selected  Architectural Designs of the Architectural Institute of Japan 2013

2012   Motion Picture & Television Engenieering Society of Japan, Awards 2012

2012   21st BELCA Award for Tsuruoka Town Cinema

2012  32nd Award of AIJ Tohoku for Tsuruoka Town Cinema

2010  Short Listed for Leaf Award London, Tsuruoka Town Cinema

 

Tokihiko Takatani  architect/professor

Takatani Tokihiko Atelier  architecture/urban design Tokyo

Graduate School of Tohoku Koeki University  Tsuruoka-City Yamagata-Pref. Japan