ジャニーズ問題に関して、NHKで放送された「クローズアップ現代」という番組を見た。よく国営放送的な色彩の濃いNHKで、この放送が許されたのかと思ったし、それだけ、この問題が、単なるジャニーズ事務所や性加害といったに問題に限らず、マスメディアの在り方や、権力者の言うことには逆らわないという日本社会の風潮に対する大きな問題提起であることを示しているのではないかと考えた。
そもそも、ジャニー喜多川氏がアイドル志願の若い男性多数に対して、言うことも憚られるような性加害に及んでいるということは、文春報道やその後の裁判については知らなくても、国民の間でも、何となく、知っている人は知っているという噂であった。それなのに、BBCというイギリスの放送局で取り上げられるまでは、マスコミ、特に、大手の新聞やテレビのワイドショーなどで取り上げられることは一切なかった。ここでも、国内では、権力者に逆らうような情報でも外国発であれば辛うじて取り上げることもあるという、国内における権力者に対するマスメディアの忖度というべき問題があると思われてならない。マスコミ(特に新聞)は、「社会の木鐸」であると言う人もいるが、例えば、朝日新聞が、戦前は体制に従順だあったが、戦後は、一転してリベラル色一辺倒に変わったように、マスコミは、その時代によって体制や世論に迎合してきた可能性がある。今回の騒動でも、未だに大手マスコミは、この問題を正面から取り上げることに躊躇しているように見受けられる。ジャニーズ事務所が、テレビ番組等エンタメ界において大きな勢力になってしまったことから、これを批判したくないということなんだろうし、この問題を深堀すると、40年以上前から、この問題を知っていても敢えて報じようとしなかった自分達の責任問題に直結するからでもあろうか。新聞にしても、偉そうな社説や論説を掲載しているくせに、この国の権力構造の本質的な問題的に切り込むことを避けているというような感じすらしてならない。
安倍元首相の本当の意味での功罪は何なのか、アメリカとの安保密約の内容と、どこまで日本の政治が米国にコントロールされているのか、中国が我が国に及ぼそうとしている本当の意図と目的は何か、親中派と言われる政治家達はどこまで影響を受けているのか、地震予知の困難さと東南海地震や首都直下型地震が発生した時とその後の経済的社会的影響の深刻さはどうか、自衛隊のレジリエンス能力を含む本当の実力はどうか、原発利権と政治家の関わり、広報代理店などを使った世論工作の実態など、マスコミが報道していないと思われることは沢山ある。それに比べると、一見して、ジャニーズ問題などは取り立ててどうこういう問題では無いのかも知れないと思えるが、しかし、この問題に対するマスメディアの対応にこそ、我が国マスメディアの体質とか、根本的な問題点が潜んではいないだろうか。
私の乏しい経験でも、かって接触したことのある新聞記者は、偉そうにしていて反権力を気取っているくせに、記者クラブ制度に安寧して、垂れ流し記事しか書いていない人が多かったように思う。反権力を気取るというならば、ジャニーズ事務所に忖度して真実の記事一つも書けないのは、何とも情けなくて憤りを覚えてならない。
※木鐸とは、世間の人々を教え導く人。または、世論を喚起して導く存在としてのジャーナリズムの重要性を表した言葉。