時は戦国。
各地の戦国大名が覇権を争い、家臣が主君を倒して代わりに大名になり覇権争い・・・
時には一族同士で争う時代の北条領武蔵国日尾城。
ここに諏訪部定勝と言う武将がいました。
桶狭間の戦いで今川義元が戦死し、甲斐国大名武田信玄が跡を継いだ今川氏真を攻めた。
氏真に北条氏康の娘である早川殿を正室として嫁がせていた北条家は武田家と交戦状態になる。
その最前線基地となっていたのが定勝が城主として守っている日尾城であった。
常に武田軍と睨めっこと小規模戦を繰り返している日尾城・・・・
定勝自身も氏邦指揮下の秩父衆の重鎮であり武田信玄が小田原侵攻の際は野伏りするなど苦しめるほどの名将であった。
定勝には遠山直景の娘と結婚していた、頼りになる良き妻である。
そんな武田軍と抗争中・・・・1568年のある日・・・・・
「諏訪部殿、よく飲みますな。」
諏訪部定勝「なんのなんのこれからよ。」
「おぉいい飲みっぷり」
日尾城の定勝に客人が来た。
定勝は宴を開き酒を出すなどの歓迎し酒を飲みあう。
だいたい酒を飲んでいるのは定勝である。
なんたって定勝は一晩に3升も飲み干す程の大酒飲みである。
だが、それが定勝の弱点である。
張飛や伝説上の人物ヤマタノオロチや酒顛童子のように失敗するタイプの人間で。
毛利元就の父と兄が酒で飲み過ぎで亡くなり、上杉謙信は酒が原因で死去・・・大坂の陣では本多忠朝が酒が原因で敗退し自身も戦死する事例が数多くある・・・
その結果・・・・・・・・・・定勝は失敗する結果となってしまい一生後悔するミスをする・・・
妙喜尼「お前様飲み過ぎですよ。」
諏訪部定勝「いいではないか、このくらいウック。」
妙喜尼「いつ武田が攻めてくるのか分からないのですよ、いざって時はどうするのです?って・・・ちょっとお前様・・・もう・・・・」
定勝の妻(妙喜尼に統一)は客が帰ってもなお飲んでばかりいる定勝を心配するが、そのまま酔いつぶれて寝てしまう。
頭を抱えながらもし武田軍が今攻めてきたら落城してしまうと・・・・嘆いた。
まぁ考えすぎだろうと、妙喜尼は思うが・・・・・・・その翌日・・・・
「殿一大事でございます。」
妙喜尼「何があった?」
「奥方様・・・・実は・・・・・武田軍が・・・・攻めてきました!!」
妙喜尼「えぇぇ!!」
武田軍の家臣で24将に数えられる山県昌景の軍勢が定勝が守る日尾城に攻めてきた。
すぐさま定勝に報告し、軍をまとめ出陣し迎え撃つか籠城して戦うかに普通はなるのだが・・・・
当人は・・・・・
諏訪部定勝「ぐわぁぁぁぁおぐわぁぁぁお・・・」
妙喜尼「こんな一大事でも呑気に寝て・・・・」
「殿ぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ」
泥酔状態で寝込んでいた。
仮に起きても二日酔いで軍を指揮できるはずもなく、事実上日尾城は指揮官なしとなってしまった。
一応家臣を集めるが・・・・・
「殿が寝込んでいるだと?」
「こんな一大事なのに頼りない。」
寝込んでいるので、軍議も進まない・・・・
家臣たちは定勝の情けない様子に呆れる・・・・
むしろ・・・・このままでどうやって戦えばいいと・・・・
家臣たちは不安がるが・・・・・
「なっ・・・・」
「お.奥方様・・!!」
そんな中、軍議中に妙喜尼がとんでもない姿で現れる。
妙喜尼「皆何をそんなに驚いている。」
「その恰好は甲冑じゃないですか。」
「まさか・・・・」
「私が情けない夫に代わり出陣するのじゃ、何か?」
「何かって・・・・」
とんでもない姿とは甲冑姿である。
妙喜尼曰く自ら出陣して山県昌景を迎え討つと・・・・
家臣は驚愕しながら甲冑姿の妙喜尼を見る。
山県昌景「各隊どうなっている?」
「ハッいつでも日尾城を攻め落とす準備はできています。」
山県昌景「そうか・・・今までは小競り合い程度だったが・・・今は本気だ!」
昌景は今度こそ攻め落とす気でいた・・・
あの女が出てくるまでは・・・
妙喜尼「誰か・・・具足をもてッ、後貝を吹け・・、出陣前に湯づけじゃー!」
「はい」
妙喜尼は同様に武装した侍女達に具足を持たせ、ほら貝を吹かし湯漬けをもって来させる。
こうしているうちに部隊の編制が完了する。
そして・・・・
妙喜尼「出陣じゃ!!!」
と叫んで山県軍に向かって出陣してゆく。
山県昌景「強すぎる・・・・・なんでこれほどまで強い・・・・」
「報告、敵将は定勝ではなく・・女だそうです!」
山県昌景「女じゃと!!」
戦国最強の武田軍の武将山県昌景は予想外の日尾城兵の強さに驚き。
さらに敵将が女だと知るとさらに驚く・・・
こうして苦戦していくうちにこれ以上の損害は危険だと判断し撤退する・・・・・
妙喜尼の活躍で武田軍を追い返すが・・・・・・・・
北条氏邦「飲んだくれて出陣できず、妻が出陣・・・定勝お前は何をしていた!!」
諏訪部定勝「申し訳ございません。」
北条氏邦「今後一生酒を飲むな!!お前はいい武将だが、酒でダメにする。いいな!」
諏訪部定勝「ははぁ」
この一件が原因で主である北条氏邦は激怒。
今後酒を飲まないことを誓わされることになる。
まさかこんなことになるとは・・・・定勝はものすごく後悔した。
大好きな酒が飲めない・・・・・・・・・定勝は・・・とぼとぼと日尾城へ帰ってゆく・・・・・
その後、北条家の武将として活躍する定勝。
1588年に没することになり、妙喜尼はその菩提を弔うのであった。
酒で失敗・・・・・・・・・・歴史ではよくあることである。
読者の皆様も酒を飲み過ぎて一生後悔するような真似は絶対にしないでください・・・・
後・・・・・・・・・女を怒らせないように・・・・
女は武器を持たせるととんでもなく強いですから(笑)