高学年ともなれば,子どもたちの最も関心の高い話題の一つが
「好きな人」
の話題です。
女子が
「○○くんがかっこいい!」
「○○ちゃんは,○○くんのこと好きなんだって!」
と顔を赤くしたり,男子が
「お前○○さんのこと好きなんだろ!」
とつつき合ったり。
こんな話をしているときは,無条件に子どもたちは盛り上がってますよね。
年頃ですから,よく分かります。
しかし,こんな様子がトラブルを生むこともあります。
噂話で誰かが傷ついてしまったり
好きな人をめぐって子ども同士がケンカになったり
手紙のやりとりが授業中にされるようになったり
なにより,こんな話題が盛り上がりすぎると,常にクラスとして落ち着かず,慌ただしい空気になってしまいます。
担任として,それはすごく避けたいことです。
「お前たち,キャーキャーやかましい!いいかげんにしろ!」
って一喝したくなるほどです。(笑)
しかし,頭ごなしに
「その手の話禁止」
とするのは考えものです。
年頃の子たちの一番の関心ごとを禁止するなんて,先生は無情すぎるでしょう。
私はこんな話をするようにしています。
「最近,好きな人の話題で盛り上がっている人たちがいますね。」
ズバッと切り出します。
この時点で,「盛り上がってる人たち」は,ドキッとした表情をします。
「その話であまりにクラスが騒がしくなってきているので,大事な話をします。よく聴きなさい。」
ここは真剣な表情で。
(禁止されるのかな…)と不安げな子どもたち。
「そもそも,人が人を好きになるということは,とても自然なことだし,とってもすてきなことだと思います。大人になりつつあるきみたちにも,そんなことがおおいにありえるだろうし,そのことに,どうぞ,一生懸命であってほしいと思います。」
ここで,子どもたちの表情は和らぎます。(なんだぁ)
「ただし!」
強く切り返します。
「『好きな人の話』っていうのは,とても楽しいものですが,一歩間違えると,大きな問題になるものなんです。この問題で苦しむ人や,崩れていくクラスを先生はこれまでにも見たことがあります。」
「だから」
「クラスの中で『好きな人の話』をするときは,必ず次の約束を守ってください。それができなければ,その手の話はこのクラスでは一切禁止とします。」
「先生のあとに続いて言いなさい。」
「嫌がってる人を巻き込まない!さんはい」
「嫌がってる人を巻き込まない。」
「そんな話に,関心のない人や,してほしくない人だっているんです。そんな人を絶対に話題に挙げないでください。次に」
「他人の噂を勝手に広めない!さんはい」
「他人の噂を勝手に広めない」
「あることないこと,噂話にして広めることを楽しむ人がいますよね。先生はそんな悪い趣味をもっている人が嫌いです。最後に」
「絶対に授業中にその話題をしない!さんはい」
「絶対に授業中にその話題をしない」
「言うまでもないことです。コソコソ話だろうが,手紙だろうが,一切許しません。」
「以上の3つの約束です。これらは,クラスの約束でもあるし,人としてのマナーでもあります。『好きな人の話』は,約束を守って,マナーを守って,気持ちよく話題にできるものであってほしいと思います。」
ありきたりですが,子どもの心情を受け止めつつも,クラスの秩序を守るために,少し先回りして,ラインを設けるという手段です。
子どもたちにとっては,「好きな人」の話題で盛り上がることは楽しいし,青春時代のよき思い出になるものです。
逆にそれがあまりないまま大人になるのも,さびしい感じがします。
だから,そんな話題にはどっぷりつかってほしいというのが本当の気持ちです。
が,それはクラスの秩序が保たれることが前提です。
過去に,自分のクラスではありませんが,お隣のクラスで,保護者まで出てくるトラブルになっているのを見たことがあり,本当に厄介な状況でした。
担任の役目というのが重要になってきます。