「先生,なんの果物が好き?」
男の子が聞いてきました。
「果物ね… なしかな。」
そのあと子どもはすぐにこうきます。
「なし?ぼくはね,みかんだよ。昨日ね,おばあちゃんちからいっぱいみかんが届いたの。すっごく甘かったよ。ぼく,みかん大好き!」
男の子は,先生に果物の好みを聞きましたけど,本当は自分が好きな果物を伝えたいんですね。
こういう子どもとの会話は,よくあります。
「先生,何の野菜が好き?わたしね…」
「先生,昨日の日曜日,なにしてた?ぼくね…」
かわいいものですね。
考えて答えたのに,先生の意見はそっちのけでしゃべりだすものだから,先生は「…おいっ」ってなりそうですけど(笑)
以前,クラスのある子のお母さんに,声をかけてもらったことがあります。
「ゆうたが,昨日大好きな科学館に行って,『メタボバッタ』っていう工作を作ったんです。また,話聞いてあげてください。あの子,大好きだから。」
そして,こう教えてくださいました。
子どもは,好きなことを共有してくれる人を探している!
ということです。
確かにそうですね。
子どもが好きなことを精一杯アピールしたあとに,
「先生も,それ好きなんだよ。」
「へぇ~おもしろそうだね!先生もそういうの好きなんだよ。」
「好き」というのを共有してくれる人がいると,子どもはとてもうれしそうです。
まだ物事を見る色々な視野の狭い子どもたちにとって,自分の好きな世界というのは,強烈ですよね。
普段,子どもと大人の関係は
「子どもがアピールする」→「大人が聴いて,受け入れる」
というものより
「大人が教える,指示する」→「子どもが聴く,従う」
という関係の方が多く,その時間の方が長いものです。
これは学校でもそう。
先生が教えて,子どもが聴く。
学校生活の多くの場面でそうです。
もちろん,子どものアピールを受け止めよう,子どもの話を聴こうと先生が努めるときもたくさんありますが,これがなかなか難しいときもあります。
そんな中で,先生が「子どもの好きなことを共有してあげる」役目になってあげられたら,それはその子にとっては,とてもうれしいことですね。
きっと,そんな先生を好きになるのでしょう。
普段,なかなか一人一人の話をじっくりとは聴いてあげられなくても,だれかが
「~が好きなんだ!」
の話をしてきたら,「先生も!もっと教えて!」と,同じテンションで受け入れてあげられたらいいですね。