何を見ても何かを思い出す

He who laughs last laughs best

想いとともに咲き誇れ

2018-06-24 22:57:05 | ひとりごと
御大は、昨年 目の手術をして以来、庭仕事から少しずつ手を引いていたのだが、その結果はすぐに出てしまった。

連作障害を避けるための植え替えがおざなりだったこともあり、今年の菖蒲はかなり残念なことになっている。

本当はいろいろな庭仕事の引継ぎを私にして欲しいのだろうが、今の私には、とてもではないが その余裕はなく、御大の想いに気づきながら、見て見ぬふりを決め込んでいたのだが、「これだけは植え替えを一緒にせねばならぬだろう、覚えておきたいだろう」と声をかけられたものがある。

シンビジューム

皇太子御夫妻の御成婚を記念して誕生した、シンビジュームのシーサイドプリンセス・雅子
当時まだ学生で懐具合が厳しかったこともあり、ひょろりとした株が二本で一万5千円は、まさに高嶺の花だった。
だが、諦めきれず、園芸店を通る度にのぞいて見つめ続けていると、お店の主人が 「おめでたい事だし、それほど望んでいる人に買ってもらうのが一番だと思う。だけど、需要もあるし、畏れ多い花なので、一万二千円よりは下げられない」と声を掛けて下さった。その申し出を有難く受け、私が育て始めてから、二十年以上の年月がたった。

そして今年、皇太子ご夫妻は銀婚式を迎えられた。
この25年の間には、お辛いことの方が多かったのではないかと拝察される。
事実、銀婚式にあたり発表された書面にも、「喜びや悲しみなどを分かち合いつつ,歩んでまいりました」と、あえて悲しみにも言及されている。

そんな悲しみも、シンビジューム・プリンセス雅子は見つめてきた。

一般にクリスマス頃から店先を飾るシンビジュームだが、我が家はかなり冷え込む時期まで軒下に置き、その後は何度か霜が降りた頃ようやっと縁側に入れる。
そうして、寒さに出会ったシンビジュームは、花が咲く時期こそ一般の開花時期より遅れるが、早咲きの花がすっかり終わった頃に、強く凛々しい花を長い間 咲かせてくれるのだ。

御大の わざわざ寒さに当てる育て方が正しいのかどうかは分からない。
だが、寒さを乗り越え、柔らかいなかにも凛とした花を咲かせるプリンセス・雅子に、「冬来たりなば、春遠からじ」(「西風の賦」(パーシー・ビッシュ・シェリー  訳・平井正穂訳)と、どれほど祈りを込めてきただろう。

これまでも、シンビジュームの株分けを手伝うことはあったものの、それはあくまで手伝いであったが、御大はそれを引き継がせようとしている。
「この株だけは、これからも守っていきたいのだろう」という言葉とともに。


来年5月の御即位の春、プリンセス雅子が見事に咲き誇っているように、新しい御世も咲き誇り続けるように、シンビジュームの育てかたを引き継ぎたいと思っている。