何を見ても何かを思い出す

He who laughs last laughs best

転がる心、②

2018-07-06 12:30:00 | ひとりごと
一月ほど前に、旧友との久しぶりの再会にウキウキして渡った渡月橋が全面通行止めになっている。

数日前から降り続く大雨は、台風の影響を受け更に発達し続け各地で被害を出している。
先日震度6弱の地震に見舞われた大阪北部の地盤の緩みも心配だが、桂川も鴨川も、あの広い河川敷が濁流で覆われ溢れんばかりになっているので、渡月橋を渡ったところでバスを降り参拝した松尾大社から、鈴虫寺、苔寺へのそぞろ歩きを思い出しながら、被害が拡大しないことを祈っている。



苔寺は事前に予約を要するお寺で、苔が美しい梅雨時は希望の日にお参りするのが難しい名刹だという。
当日 指定された時間にきちんと到着できるように、近くのお茶屋で一服していると、おそらく同じ目的と思われる人達が、そこかしこでカメラの手入れなどされている。

いよいよその時がきて、衆妙門をくぐると先ず蓮の花が出迎えてくれたので、弥が上にも期待は高まる。

高まる期待を胸に写経をしてみれば、長年の腱鞘炎の痛みもなんのその。
字が上手くないのは仕方がないとしても、写経そのものが(適切な言葉ではないかもしれないが)とても楽しく、最後に「誓願」を記す頃には、厳かな気持ちになってきた。
そんな心持で書いた写経を、本堂にお納めし、いよいよ苔を堪能しようかとお庭に向かったのだが、苔が、、、思いの外艶やかではない。
枯れているのか乾いているのか、地面の地肌が見えている所もあれば、苔が黄色くなっている所もある。

あちこちから、「梅雨時にこれでは、苔はそうとう傷んでいるのかもしれない。観光客が歩き散らかしてしまった熊野古道とは違い、人が踏みしめたことで苔が傷んだわけではないので(苔寺は当然のことながら、回遊路の中だけを歩くことが許されている)、酸性雨のせいだろうか」などの心配と失望の声があがっていた。

ひそひそと上がる失望の声がひそひそながら途切れないのは、おそらく環境問題を懸念してのことだけではないだろう。

拝観料が、3000円

これが、期待を大いに高め、ガッカリ感を強めてしまったのだと思う。

だが、「あやかし草子」(宮部みゆき)で「誓願」と願掛けについて読みながら、心という文字を模した黄金池と写経の時間を思い出すと、後から後から有難い気持ちが湧き上がってくるから不思議だ。

そのあたりについては又つづく