何を見ても何かを思い出す

He who laughs last laughs best

ぜんぶ、山 ⑧

2018-10-25 12:00:00 | 自然
「ぜんぶ、山①」 「ぜんぶ、ワンコ 山 ②」 「個々の累積の個々が全部 ③」 「ココは全部、山 人生④」 「ぜんぶ、同じ花⑤」 「続 ぜんぶ、山・槍 ⑥」 「ノーベル賞受賞者に出会った山⑦」

8月12日早朝、槍沢ロッヂを発ち槍ケ岳をめざした今年の夏山。

帰宅早々その記録を始めたのは、初めての「命からがら、間一髪」な経験に興奮冷めやらぬという状態だったからだが、その後 とびとびにしか記録できず、今に至ってもまだ完結していないのは、もちろん猛烈に忙しいということもあるが、結論からいうと、濃霧のせいでまともな写真が撮れなかったという事と、山pの体調不良もあって登頂が叶わなかったという事もある。だが、SDカードに不具合が生じたことからデジタルものの脆さも体感し、個々の感想はともかくも記録だけでも急ごうと(←何を今更!)思っている。

森林限界を超えると日差しを遮るものがないので、晴天よりは少し肌寒いくらいの曇天の方が歩きやすいことは確かで、この日もそこそこ快調に飛ばしていたのだが、殺生分岐のあたりから、吹き飛ばされそうな風が吹いてきた。

吹き飛ばされそうな風のなか脳裏に浮かんだ「岳 みんなの山」(石塚真一)のある言葉が、今また強く心に迫ってくる。

『なんでだろうね
 追い風には
 押されればいいし
 向かい風には向かえばいいけれど、
 突然吹く横風に
 簡単に飛ばされちゃうんだな
 どうしても』(「岳 みんなの山」より)


初めてこの言葉を読んだのも、たしか山小屋でのことだった.
その時は「人生という山歩き、向かい風の往なし方は多少覚えたかもしれないが、追い風なんて有難いものに出会ったことはないな」と独り言ちたものだが、今は突然吹くという横風が気になって仕方がない。

それは、夏以降、突然の病に倒れたり、思いがけない事で苦しみもがいたり、戦列を離れたりする人が相次いでいるのを目の当たりにしているからかもしれない。

人の命は永遠ではないし、避けることのできない悲しみや不運に見舞われることもある。まして、ズルとインチキの言いたい放題やりたい放題が大手を振って歩いている この世ではストレスばかりが溜まってしまう。
私の目には、誠実ないい人ばかりが苦労を背負いこんでいるように見えるので、安易に「前向きにいこうよ」などとは言えないが、それでも、人は意外と強いので大丈夫だ!と信じたい。

そう思わせてくれる言葉も「岳 みんなの山」にあった。

『人の身体は不思議でさ、登るのは簡単で、下るのはなぜか難しくできてるんだよね。
 ってことはだ、
 人ってのはたぶん上向きとか前向きにできちゃってんだろうなって』



数年前、快晴のなか歩いた槍への道(上の写真とほぼ同位置)




お山の話の完結編まで、あと一歩