澤田瞳子さんの『与楽の飯』
『与楽の飯』なんて題名だけでは、
何が何だかよくわからないのですが、
調べて見ましたら、
ばっく‐よらく【抜苦与楽】
という仏語がありました。
仏・菩薩 (ぼさつ) が、
人々の苦を取り除いて楽を与える慈悲の働き。
ということですので、
与楽の飯とは、
慈悲の飯というような意味かもしれません。
奈良の大仏といえば、
聖武天皇・光明皇后・行基と想いだすのですが、
それを汗水流して作ったのは、
各地から3年の賦役で集められた人々だったわけです。
主人公は、
そんな一人の工事現場にいる若者です。
そして、
もう一人主人公と言える人がいます。
働く彼らに食事を作る炊屋の、
宮麻呂(みやまろ)です。
宮麻呂は大仏よりも、
そこで働く人々を、
出自に関係なく大事にするのです。
宮麻呂の飯が美味しくて、
激しい労務にも耐えることが出来る。
だから、
仕丁たちは、
「宮麻呂は自分たちの仏」だと言うのですよ。
平安時代まで存在した、
奴婢などの話も盛り込まれておりますので、
単に面白い歴史小説というには、
憚られる本でした。
奴婢は、
お風呂にも入れず、
食べ物にしても一日一食で、
家畜以下の扱いだったようです。
そのころの人の格差は、
今の比では無かったでしょうね。
そんな中で、
炊男(かしきおとこ)「宮麻呂」の、
どんな卑しいと言われる生まれの人でも、
大事にするという気高さは、
周りの人々にも、
感化を及ぼしていきます。
大仏が人を助けるのではない。
人が人を助けるのだ。
と言う宮麻呂の信念。
そして、
そんな中で造営される大仏の役割とは。
Keiさん、
良い御本の紹介有難うございました。
小説とは言え、
歴史の裏側を見た思いです。
夏休みコメント欄閉じてます。