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千歳村文学講座「徳冨蘆花を知る」レジュメ『自然文学の金字塔「みみずのたはこと」』

2014年07月19日 | 世田谷日誌

第四回  自然文学の金字塔「みみずのたはごと」レジュメ(転載許諾済)

講師:渡邊勲氏(財団法人「蘇峰会」評議員)

田園のポエジー 「みみずのたはごと」
                  読む、聞く、心にえがく 
故郷(ふるさと)のポエジー

① 世田谷・粕谷は私にとっての「故郷」(ふるさと)
  故郷には、素朴さ、うるおい、安らぎ、懐かしさ、感傷がある
② 私の生育歴と「みみずのたはこと」、文学開眼

ペンの色彩(いろどり)、 絵筆より美し
① 「みみずのたはこと」「自然と人生」は、ペンで描いた絵画
  「みみず」は水彩、「自然」は日本画
② 中学校(旧制)の国語教科書に掲載された「文学教材」
  当時の紀行文・写生文の主流は、「大町桂月」
  「自然と人生」の「相模灘の落日」に感嘆と驚喜
③ 印象派の絵画(セザンヌ・モネー)より美しい

自然への憧憬と田園詩人
① 国木田独歩とのかかわり~国民新聞社の同僚、独歩の仲人は兄・蘇峰
  日清戦争で従軍記者~「愛弟通信」が大好評
  名作「今の武蔵野」を「国民新聞」に掲載(明治31年1・2月号)
  のち「武蔵野」に改題~蘆花は非常に嫉ましくおもう
  独歩に「写生文」を勧められる
② 「和田美作」について洋画をまなぶ(29歳)
  傷心の蘆花は妻の絵筆を見て、猛然と絵心をかきたてられたのが理由
  1週間、10日と家をあけ写生行脚
  恒春園資料室と、粕谷区民センター図書館にその作品が陳列されている
③ 逗子へ転居(明治30年)、東京を離れ湘南の自然に近付たい
  湘南の自然を活写
 「此頃の富士の曙」を発表、この美文調の短文が好評、国木田独歩が激賞
 「徳富氏は自鹿の日記を書いたら面白かろう」の一言が「湘南縫筆jを執筆の契機、以後、掌編の自然描写写生文を発表、非常に好評
 「自然と人生」を刊行(明治33年)、文名おおいに高まる(月給から以後印税)
  昭和3年までに発行部数・50万部(当時、日刊新聞が最高6万部の時代)
④ 「画家・コロオ」を「国民の友」に発表(明治30年)~「自然と人生」に収録
  バルビゾン派(フォンテンブロー派)は、19世紀フランスの代表的風景画家群
⑤ アルフォンス・ドオデー(1840~1897)への憧憬
 「アルフォンス・ドオデー」を「国民の友」に発表(明治25年)
  ゾラと同年令、フローベル、ゾラ、ツルゲネーフと親交
  肌身離さず手帳を持ち、現実を直視し印象を忠実に書き留め、それを素材に執筆
  憐愍(びん)、憐れみ、微笑が渾然一体となった暖かい作品
 「風車小屋たより」「月曜物語」は、「みみず」に極めて近い
  むしろ蘆花は、「風車小屋たより」を頭において、「みみず」を書いたのでは!
  その検証のため、5回渡仏したが確証は得られず残念
⑥ トルストイに触発、ヤスナヤ・ポリヤナでの謦咳

読む、 聞く、 心にえがく
① 作品(芸術)の鑑賞は、五感をとおして作品に語りかけること
  やたらと、解説、解釈、分析、考察などをすべきでない、それは学者の仕事
  好事家、ペダンチック、ディレッタント、スノビズムたるべきではない
② 「故人に」
  今は亡き畏友に対して語りかけるオマージュ
  国木田独歩(1871~1904)明治4~明治41年、享年38歳
  明治41年2月3日病状とみに悪化したため、茅ヶ崎・南潮病院に入院
  その4月、田山花袋・島崎藤村・徳田秋声・真山青果など友人が相図り、
  「二十八人集」(新潮社刊)をその病床に贈る
  その一編を「みみず」発行にさいし、大正元年12月29日に加除訂正したもの
  村入り(引っ越し)から今日までの粕谷の経緯を詩情豊かに描いている
③ 「都落ちの手帳から」
  「都落ちの手帳から」5篇、この掌編から「みみす」が生まれる
  創作年月日の記載はないが、明治40年から43年ころの執筆
  「都落ち」とあるように、青山高樹町から府下粕谷村へ引っ越し
  新居での暮らし、期待、願望、素志、ロマンを夢見る
  風俗、習慣.郷(むちざと)の習い、そして社会と生活文化の差に戸惑い
  牧歌的、ロマン豊かで長閑に描く
  落ち武者的な切なさ、シニカルで拗ねもの的な心情もかいま見える

自然文学の名作、傑作
①  自然文学の傑作
  志賀重昂「日本風景論」
  大町桂月「紀行文」、島崎藤村「千曲川のスケッチ」
  国木田独歩「武蔵野」、徳冨蘆花「みみず」「自然と人生」
② 「教科書に掲載された文学作品出度表」43年9月、
  明治、大正時代は最も多く、群を抜いて第一位
  昭和の戦後は、高校で第10位
  夏目漱石、森鴎外は教科書から外れ、忘れられた存在の作家に
③ 明治から大正時代は、「自然と人生」が多く
  大正中期から昭和にかけては、「みみず」が多い
⑳ 「みみず」の頻度数(財団法人・教科書セター・調べ)
  「村の一年」15、
  「夕立雲」13、
  「水車問答」8、
  「田川」「驟雨浴」「草取り」「若草山の夕」5、以下略
  その特徴は、
  自然への近親感、詩情がゆたか、無駄の文章、的確な描写 

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4 コメント

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「みみずのたはこと」一番好きな作品です。レジュ... (蘆花ファン)
2014-07-19 22:50:28
「みみずのたはこと」一番好きな作品です。レジュメだけでも楽しくなりました。久方ぶりに恒春園に行きたくなりました。渡邊先生の講義聞いてみたいですね。
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ご紹介した渡邊先生の玉稿二部作を是非お読み下さい。 (管理人)
2014-07-19 23:11:26
ご紹介した渡邊先生の玉稿二部作を是非お読み下さい。
返信する
渡邉先生の著作は読了しております。今日、芦花公... (蘆花ファン)
2014-07-20 17:41:57
渡邉先生の著作は読了しております。今日、芦花公園と粕谷図書館に行ってきました。あと、蘆花もなか食べました。美味しかったです。
返信する
他の講座も努力します。 (管理人)
2014-07-22 08:31:13
他の講座も努力します。
返信する

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