「安倍晋三首相は21日、靖国神社の春季例大祭(21~23日)に合わせて、真榊(まさかき)と呼ばれる供え物を奉納した。オバマ米大統領の来日を23日に控え、中韓両国との関係改善を求める米側に配慮し、参拝は見送る方針だ。」と報道されました。
「失望した」オバマ大統領の顔をたてるために例大祭の参拝を断念したけれども大きな問題は政府主催の「全国戦没者追悼式」が行なわれる8月15日に参拝するか否かでしょう。平成18(2006年)8月15日の敗戦の日に小泉首相は最初の自民党総裁選の公約を果たして靖国神社へ参拝しました。
2014年4月11日付朝日新聞「耕論」に文芸評論家加藤典洋氏が『敗戦の「ねじれ」に向き合って』の中で、『「悪い戦争を戦って亡くなった自国民をどう追悼するのか」という、世界史上かってなかった課題に私たちは直面したが、その解決策をいまだに見いだせない。これが第一のねじれで靖国神社参拝問題です』と、インタビューに応じています。
「悪い戦争を戦って亡くなった」のかどうかを一切調べることもしなかった軍人・軍属の遺族たちの団体である日本遺族会は、当初は追悼施設としての靖国神社を宗教法人では無く、戦前と同じく国家護持を方針として運動をしましたが、自民党は国会で法案を成立させられませんでした。それでは天皇の参拝を願いましたが、昭和天皇はA級戦犯14人の合祀以降は参拝をせずに春秋の例大祭には勅使を参向させるだけとなりました。今上天皇は国民世論の評価が別れている靖国神社には絶対に参拝は致しません。そこで日本遺族会は「英霊顕彰事業として首相・閣僚の靖国神社参拝の推進」を運動方針として自民党に働きかけてきましたので小泉氏は自民党総裁選の公約にしたのです。
A級戦犯被疑者として巣鴨プリズンに3年半拘留された祖父岸信介総理大臣の不名誉を晴らすことを信念としている最右翼政治家安倍晋三氏は、必ずや8月15日に靖国神社を参拝すると考えています。その際、12月の参拝時と同じく鎮霊社にも参拝するか否かが管理人にとっては最大の関心事であります。「安倍総理は鎮霊社も参拝」参拝後の談話に『また、戦争で亡くなられ、靖国神社に合祀されない国内、及び諸外国の人々を慰霊する鎮霊社にも、参拝いたしました。』とありましたが、政府主催の「全国戦没者追悼式」は広島・長崎の原爆犠牲者や空襲犠牲者等も追悼するのですから鎮霊社も参拝しなければ辻褄があいません。当日の靖国神社外苑では、英霊にこたえる会と日本会議が主催する「戦没者追悼中央国民集会」が開かれておりますので「安倍総理が本朝〇〇時、本殿と鎮霊社を参拝されました」との司会者報告に割れんばかりの拍手と歓声が沸き起こることでしょう。その後参加者達は、鎮霊社に参拝しようとしたところ「警備の為現在閉扉しております。この場にて参拝して下さい」と門扉の外から参拝させられることになるのでしょう。
「悪い戦争を戦って亡くなった英霊」を合祀している神社の本質をごまかすために建立された鎮霊社は「鳥居」も造らずに飽くまでも「日陰の存在」にしておきたかった靖国神社が英霊にこたえる会と日本会議からの申し入れもあって現在の場所から、誰もが何時でも参拝が可能な場所に移転をせざるを得ない状況に追い込まれることになるのではないかと想定しています。鎮霊社も参拝するよう安倍総理に悪知恵を吹き込んだ総理の側近某氏を恨むことになりそうですね。しかし自分で蒔いた種なのですから恨んだところで詮方ないことですが。
戦前の春季例大祭日は、青山練兵場で挙行された「凱旋観兵式」の4月30日。
秋季例大祭日は横浜港で挙行された「凱旋観艦式」の10月23日。
昭和16年・明治神宮外苑管理署発行「聖徳記念繪畫館壁畫集」より