サザンオールスターズのニューアルバム「葡萄」2LP。今朝、届きました!
ボクにとっては、過去の名盤の復刻でなく、いま誕生したばかりのアルバムをアナログ盤で聴くことの出来ることが重要なのです。学生時代には普通だった営みのつづいていることが。
サザンオールスターズ、ならびに桑田佳祐がアナログ・バージョンを出し続けてくれていることは、ホントに有り難い。
ジャケットは、やっぱりこのサイズでなくちゃ!
我がヤノフスキ祭りの最終日。
およそ3週間という短い間に同じ指揮者のコンサートを6回も聴くというのは、わたしとしても珍しいことだ。
さて、「ワルキューレ」2日目。初日に受けた感動を深めたり確認する場面もあれば、新たに気付かされることもあった。初日のような「無条件降伏」ということにはならなかったものの満足度は最上級である。
再確認できたのはヤノフスキのオペラ指揮者としての手腕である。歌手の声量に配慮しつつ、オーケストラに最善のバランスをもたらす力量には敬服するほかない。
歌手に配慮することで、オーケストラの音量が抑えられたり、スケール感が小さくなったりというマイナス面はあるにはあるのだが、そこに現出するサウンドには一種の慎みを伴った奥深さがあり、その音楽的魅力は絶大である。
その結果、第2幕の長丁場が実に意味深く、面白くなる。冗長になりがちなヴォータンの独白に一切の間延びはないし、フリッカとヴォータンの遣り取りもスリリングの極み。
さらには、ブリュンヒルデがジークムントに死を予告する場面での彼岸を思わせる霊的な空気感など実に美しかった。
いま、フリッカとヴォータンが良かったと書いたが、歌手陣でもっとも図抜けていたのがフリッカを歌うエリーザベト・クールマンである。
いやはや、これほどまでに怖い怖い怖い怖いフリッカもそうそうなく、首筋に寒さを覚えた同士も多いのではなかろうか?
残る歌手にはそれぞれ注文はあるけれども、実演でこれだけ聴かせてくれたのだから、満足せねば罰があたるだろう。
唯一、この名演に水を差したのは、第3幕のワルキューレたち。崇高な舞台に突如異物が闖入したような違和感は拭えない。
名指しこそ避けるが、一部に発声とピッチに難のある歌い手がおり、全体にもアンサンブルになっていない。ハモった和音がひとつでもあったろうか?
初日は、2階席の左サイドで聴いたからまだよかったが、本日は1階席の右サイドにて舞台下手に陣取る彼女らの声を正面からまともに浴びてしまったのだから堪ったものではない。あまりの違和感にオーケストラが聴こえなくなるほど。しばし立ち直るのに時間が掛かってしまった・・・。
N響はたいへんな好演だったと思う。特に低弦には充実度があり、金管、木管共に色彩感の変化を伴ったアンサンブルが見事。ティンパニは強打よりもメゾ・フォルテの美、さらにはピアニシモ、ピアノにかけての無限の段階で魅せた。
ただ、ヴァイオリンについては、ゲスト・コンマスのキュッヒルが素晴らしいほどに、後ろのプルトとの音楽性や技量の差が明らかにされてしまったのは皮肉である。
指揮者からの気をキャッチしてから音に出すまでの情報伝達速度など、キュッヒル一人、次元を異にしていたし、弓の幅やスピード、手首、肘、腕全体や背中の動きなど、何から何までまったく違うのだ。
あのエネルギー感や技術的な示唆を、後ろのプルトがもっと受け取って体現していたなら、さらに高いレベルの演奏となっていたのにと、それだけが惜しまれる。
とはいえ、これほどのコンサートはそうそうあるものではなく、大いに感銘を受けたことは間違いない。
キュッヒルが終始満足そうな表情だったのも印象に残る。きっと、派手なパフォーマンスやはったりとは無縁の実力者、ヤノフスキのことが好きなんだろうな。それを客席から感じられたのも嬉しかった。
いまから、来年の「ジークフリート」が楽しみだ。
ヤノフスキとキュッヒルの益々の健勝を祈ると共に、わが仕事と公演日程が重ならないことを願うばかり。
指揮:マレク・ヤノフスキ [インタビュー]
ジークムント:ロバート・ディーン・スミス
フンディング:シム・インスン
ヴォ―タン:エギルス・シリンス
ジークリンデ:ワルトラウト・マイヤー*
ブリュンヒルデ:キャサリン・フォスター
フリッカ:エリーザベト・クールマン
ヘルムヴィーゲ:佐藤路子
ゲルヒルデ:小川里美
オルトリンデ:藤谷佳奈枝
ヴァルトラウテ:秋本悠希
ジークルーネ:小林紗季子
ロスヴァイセ:山下未紗
グリムゲルデ:塩崎めぐみ
シュヴェルトライテ:金子美香
管弦楽:NHK交響楽団 (ゲストコンサートマスター:ライナー・キュッヒル)
音楽コーチ:トーマス・ラウスマン
映像:田尾下 哲