福島章恭 合唱指揮とレコード蒐集に生きるⅢ

合唱指揮者、音楽評論家である福島章恭が、レコード、CD、オーディオ、合唱指揮活動から世間話まで、気ままに綴ります。

映画より合唱を エミリ・ディキンスン

2017-08-02 00:31:21 | コーラス、オーケストラ
封切りされたばかりの映画にケチをつけるのもなんなので、写真もなしに地味に小さく書くが、エミリ・ディキンスンを描いた「静かなる情熱」(岩波ホールにて上映中)は期待はずれであった。

何がいけないといって、ディキンスンの内面が全く描かれていないのである。伝記の表層的な出来事をなぞるばかりで、ディキンスンの詩作の秘密には何ひとつ触れられていないし、その魅力も伝わってこない。

何より、晩年の彼女がなぜ自宅に引き籠もり、あんなにも偏屈になってしまったかについて語られないため、これだけを観たらディキンスン本人を嫌いになってしまうに違いない。

辛うじて、そうならなかったのは、ディキンスンの詩そのものが素晴らしいことを知っていたからである。

その点、木下牧子作曲の「自然と愛と孤独と」は、本当に素晴らしい。ディキンスンの孤独と内面に広がる宇宙、自然への愛、過ぎゆく時間への哀惜など、僅か15分ほどの慎ましやかな女声合唱曲集でありながら、130分もの映画よりどれほど沢山の詩人の真実を教えてくれることだろう。

というわけで、「静かなる情熱」は必見、との発言は取り消さざるを得ない。ディキンスンを愛する人、或いは興味を抱いている人は、是非ともスウィング ロビンによる「自然と愛と孤独と」に会いにきて欲しい。


日本経済新聞 鑑賞術(毎週水曜日夕刊)今月の執筆者

2017-08-01 23:25:50 | コーラス、オーケストラ

ご報告です。

日本経済新聞の毎週水曜日夕刊に「鑑賞術」とコーナーがあります。

月毎に筆者が入れ替わり、音楽、美術に関わらず様々な分野から語られる人気コーナーとのことですが、その8月の執筆者として福島章恭が寄稿することになりました。

タイトルは、編集者との協議の上「クラシック名演・名盤」となりましたが、あまり欲張らず、毎回作品を絞って綴りたいと考えております。

幸運にも、今年の8月は水曜日が5回巡ってきますので、5本の原稿を書くことができます。

客観的なガイドと言うよりは個人的な思い出も絡めながらというスタイル。さて、どんな5本となるか、我ながら楽しみにしているところです。

どうぞ、宜しくお願い致します。