美人閣僚が進める「売春根絶」揺れるフランス真っ二つで激論…厳罰か容認か、改革か偽善か
2014.1.27 07:00 (1/4ページ)[westセレクト]
買春者厳罰化法案を担当するフランスのナジャット・バロー・ベルカセム女性権利相(写真左)。仏国民議会が12月に買春者の厳罰化法案を可決した際には売春婦らが抗議デモを行った(写真右)=いずれもロイター
フランスで今年、売春撲滅をめぐる法案の是非をめぐり激論となりそうだ。フランスでは売春は原則合法だが、法案ではこれまで罪に問われなかった買春者に最低1500ユーロ(約20万8千円)の罰金を科すという。すでに昨年末、国民議会(下院)が法案を賛成多数で可決。ただ、「性にかかわる個人の自由を脅かす」などの反対論も根強く、知識人らが賛否両論に分かれ、激論を展開している。法案は上院で議論され、今夏をめどに採決されるという。
(大谷卓)
「売春を根絶する」
フランス通信(AFP)やインターナショナル・ビジネス・タイムズ(電子版)などによると、フランスでは、売春は「世界最古の職業」とされ、現在も原則合法。売春宿の経営や路上での斡旋(あっせん)・勧誘、未成年者に対する買春は処罰対象だが、売春行為に伴う金銭の授受は罪に問われない。
ただ、2012年のオランド政権誕生で“風向き”が変わった。
「売春の根絶を実現したい」。政府の報道官も兼務する担当のナジャット・バロー・ベルカセム女性権利相(36)は12年6月、そう宣言し、改革に取り組み始めた。
昨年3月には、シラク政権の03年に提出された、売春が行われている地域で露出度の高い服装で立っていることなどを禁ずる法律を人道的配慮から廃止した。
その上で、買春厳罰化の法案を提出。昨年12月に下院で可決された法案は、客側に最低1500ユーロを科し、再犯者にはリハビリを求める一方で、客引き行為に対する罰則を廃止。売春をやめたい人への支援強化なども盛り込まれた。
経済的な事情などから売春せざるをえない女性を「性の被害者」とみて保護すると共に、買春側の厳罰化によって売春行為そのものの「需要」を減らそうというのが狙いだ。
国民を二分する議論に
ロイター通信によると、フランスで売春する人は男女あわせて約2万~4万人。その9割がナイジェリアや中国、ルーマニアなどの外国人だという。
貧しい女性が売春せざるを得ないのが現状で、経済的に苦しい学生が売春行為で生活費や学費を稼ぐケースもあるとされる。今回の法案はそうした女性を救うべく提案されたが、モデルとなったのは1999年に「買春禁止法」を導入したスウェーデンのケースだ。
スウェーデン政府が2010年に出した報告書によると、通りに立っている売春女性の数を、法成立前後の年で比べたところ、98年の726人に対し、99年は340人と半減。03年に406人と増えたものの、05年には272人、08年296人となった。
こうした取り組みに追随する国もあり、ノルウェーやアイスランドなどが同様の仕組みを導入しているが、賛否は混在している。
ルモンド紙(電子版)などの仏メディアによると、賛成の論陣を張る女性哲学者、シルビアーヌ・アガザンスキ氏(68)は「人間の体は売り物ではない」とし、「売春をする女性は、(介在する)組織の暴力の危険にさらされている」などと指摘。売春に従事している女性の大半が外国人で、暴力の支配下にあるという現実を踏まえ、賛成派の多くは「性は個人の自由」という論理では、これらを解決できないと主張している。
一方、反対派では、女性哲学者のエリザベト・バダンテール氏(69)が「(法案は)男性という性への嫌悪の宣言であり、偽善だ。論理的でもなく、公平でもない」と批判。「売春根絶は妄想」とする声明を出したほか、女優カトリーヌ・ドヌーブさんら著名人70人以上が反対署名も公表した。
各国の取り組みについては、インターネットを介した売春や、表通りから売春する女性が消えただけで「地下化」する懸念があるとの指摘もある。売春する女性らによる団体は、労働条件が悪化する可能性を示しつつ、「わたしたちも税金を払っている。働く場所が失われ、エイズなどの危険が増える可能性がある」などと反対を表明した。
改革に伴う「痛み」
今回の法改正を担当するベルカセム氏はモロッコのベニ・シケル生まれで、女性閣僚が半数を占めるオランド政権の中で最年少だ。売春根絶にかかわる法案だけでなく、さまざまな「改革」に乗り出している。
13年2月には、女性が男性と同じようにズボンを着用したい場合は地元の警察の許可を得るよう定めた1800年11月17日施行の条例について、「法的効力を失っている」と宣言。その際、ベルカセム氏は「条例は女性が男性と同じような服装をすることを禁じることによって、女性が特定の職に就くことを制限する目的があった」と述べた。
橋下徹市長のもと、大阪市もさまざまな改革に乗り出しているが、改革には必ず“痛み”が伴うし、さまざまな形で軋轢(あつれき)もうみ出す。いつでも良い結果を出すとも限(かぎ)らないし、場合によっては、悪影響が出ることだってある。
フランスでの買春の厳罰化をめぐる動きについても、米紙ニューヨーク・タイムズ(電子版)は、法案が成立しても売春は根絶しないとした上で、「ただ、フランスの法改正が女性たちを売春という束縛から解放し、(職業訓練などの支援によって)新しい生活につなげられるのだとしたら、歓迎すべきだ」などと指摘している。
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売春など金輪際起きないように、取り締まり強化を望む。
買春するものはもちろんだが、売春する方にも同等の罰則を課す必要がある。同罪である。
売る方と買う方の同意のもとであるならば、なおさらフェアではない話である。
いやならするな。