週刊少年ジャンプ2020年14号掲載
第196話 【私は】
前回のラストを経て、今回。
遂に「その時」を迎えました。
炭治郎達と無惨が戦っている街へ息を切らしながら向かい続ける禰豆子。
そうしながらも、次第に禰豆子の身体から鬼の特徴が消えていきます。
そんな禰豆子の脳裏に浮かぶのは、これまでの記憶。
大切な家族達の姿から始まり、無惨によって幸せを奪われたあの夜のこと。
思い出された無惨の言動に、激しい怒りが湧き起る禰豆子。
また遊郭編の時のように鬼化が進んでしまうのではないか、折角人間に戻りかけているのに、と一瞬危惧しましたが・・・
次に思い出されたのは、泣きながら駆け寄る炭治郎。
そうして次々と思い浮かぶこれまで出会った人達の姿。
その中にはしのぶさんとのやり取りもありました。
しのぶさんが飼っていた金魚に纏わるエピソードですか・・・。
そういえば単行本6巻のおまけページに、しのぶさんの金魚を禰豆子が愛でている様子が描かれていましたものね。
鬼に対して拭えぬ嫌悪感を抱いていたしのぶさん。
それでも・・・。炭治郎に胸の内を打ち明けていたからかな?
禰豆子に優しく接してくれていたんですね。
困惑気ながらも「仮面」ではない笑みで。
ただ一つ気になったのは、回想の中に蜜璃さんがいなかったこと。
何故に?
柱達の中で一番禰豆子を可愛がってくれて、禰豆子もまた大変慕っていたというのに。
他の方も仰っておられましたが、これはやはりこの先の展開で禰豆子が最初に邂逅する仲間が蜜璃さんになるフラグなのでしょうか?
そして・・・
最後に思い浮かんだのは・・・
(待ってました!!!)
微笑みながら手を差し伸べる炭治郎。
その瞬間、禰豆子の鼓動が大きく脈打ちます。
苦しげに頭を抱えるも・・・
炭治郎の声。
繋がれた手のぬくもり。
勢いよく空を見上げる禰豆子。
「私は 竈門禰豆子!!」
遂に
禰豆子は人間に戻りました。
一方その頃。
炭治郎達と無惨の死闘は尚も続いていました。
戦う一方で、残りの柱達が戻ってくるのを察知する無惨。
柱達の治療を行う愈史郎らに対し、「完全に死ぬまで戦わせるつもりだ」と考えていますが・・・
なに勘違いしてんだこの野郎は。
愈史郎達が仲間を治療しているのはあくまで彼らを死なせないためです!!
柱達が尚も戦場へ戻り続けるのは自らの意思!!
鬼殺隊士達は誰一人として仲間を道具扱いしている奴なんていません!!!
あと35分と確実に迫る、夜明けまでのタイムリミット。
遂に無惨は「あの逃亡手段」に打って出ます。
縁壱からまんまと逃げおおせた「爆散」という方法で!!
無惨が爆散して逃げようとしているのを察知する炭治郎でしたが、まだ対処の仕方が見つけ出せていません。
伊黒と二人で協力したとしても非常に困難なのは明らか。
ところが。
無惨は爆散出来ませんでした。
そう。
炭治郎と縁壱の他にもう一人無惨の爆散手段を知る人物―――
珠世さんが薬を用いて妨害してくれていたのです。
「複数の掛け合わせ」であった珠世さんとしのぶさんが共同開発した薬は、やはり二種以上でしたか。
この作品って二重三重どころか四重五重レベルの“仕掛け”が張られているので、そうだろうとは思っていました。
それに、珠世さんなら必ずや無惨の爆散に対する対処法を用意してくれているであろうとも。
珠世さんとしのぶさんによる薬の効果は
人間返り
老化
分裂阻害
の三種だった・・・!?
と、思いきや。
突如吐血する無惨。
実は薬の種類は四つ。
その四種類目は細胞破壊。
薬は四段仕掛けの代物でした!!(ほらね、四重五重レベルの仕掛けだった)
凄いですね。
しのぶさんも珠世さんも、自分が死んでからが本当の復讐の始まりでした。
取り敢えず無惨にはこれだけ言っておきたい。
女の怨念なめんな。
とうとう果たされました。
「禰豆子を人間に戻す」という、炭治郎の最大の目的の内の一つが。
禰豆子の目線による回想が描かれていた今回の前半。
これは回想と並行して禰豆子の自我が戻っていくのを示していたのでしょう。
私も一緒に振り返ってしみじみしましたが、同時に禰豆子を人間に戻したのは人々との絆のようにも見えて、更にしみじみ。
でも決定打となったのはやはり炭治郎。
この兄妹の絆はやはり強いですね。
「私は 竈門禰豆子」
自我を取り戻したという事を証明するこれ以上ない言葉でした。
さて。
禰豆子が人間に戻ってくれて良かったです。
きっときっと、炭治郎も大いに喜んでくれるに間違いありません。
でもね。
今人間に戻っちゃったら。
炭治郎達の解毒はどうするのぉ~~~~~!?!?
一番禰豆子の力が必要なのが炭治郎なのに!!
炭治郎が一番ピンチなのに~~~!!
禰豆子が人間に戻ってまず困るのは無惨ですが、失礼ながら私も困ってしまいました。
まあ、無惨なら「また鬼にしてから取り込めばいい」とか考えそうですけど★
いや待て、冷静に考えろ自分。
炭治郎がこれまで長い時間を掛けて修行や死闘を重ねて人間でありながら常識から外れかけるぐらい強くなったように、禰豆子もまた、人間に戻ろうとも何かしらの“力”が使えるのかもしれません。
だからこそ炭十郎やお館様が導いたのでしょう。
とはいえ、さすがに超回復能力は失われていそうですが。
それにしても、人間に戻ると同時に自我も取り戻しましたか・・・。
ええそうです。
「人間に戻る≠自我が戻る」と私は考えていましたので。
なので不躾を承知で言わせてもらいますが、人間に戻った事よりも自我が戻った事の方が私にとっては重要性が大きかったりします。
何故なら、少し前から口枷もしていない事もあり、遂に禰豆子の口から竈門一家惨殺の夜の一部始終が明らかになるということですから。
現に、今回の回想の中でもさり気に重要な情報が開示されています。
無惨が人間を鬼にしているのは「太陽を克服できる鬼を作り出すため」なのは周知の事ですが、問題はその直前の発言。
「この程度の血の注入で」と呆れているという。
と、いうことは。
禰豆子に与えられた無惨の血の量はそれほど多くなかったということです。
ですが思い出してください。
沼の鬼が禰豆子と戦った時「無惨から与えられた血の量が多い」と推察していたのを。(第12話)
何故なら、それだけ禰豆子の鬼の力が強かったから。
今回明らかになった事実とこの推測は明らかに矛盾します。
他にも禰豆子の急激なパワーアップや特殊性は珠世さんや堕鬼も目を見張るものがありました。
ということは、やはり・・・。
竈門家には「鬼に関わる何か」があったという事なのではないのでしょうか。
そして禰豆子が自我を取り戻したことで開けたことがもう一つ。
禰豆子の視点からによる炭治郎の過去も明かされるであろうことです。
これまでにも竈門一家の過去の出来事は描かれてきましたが、それらは全て炭治郎一人の視点によるものでした。
継国兄弟(巌勝&縁壱)の場合が良い例ですが、同じ場面でも一人の視点からだけでは真実は明かされにくいものです。
個人的に気になっている炭治郎の過去の出来事はこの二点。
一つは第81話で炭治郎が語っていた、幼い頃弟を火鉢から庇って額に火傷を負った時。
もう一つは第92話で炭治郎が失神時に夢見た、おそらくかなり珍しいであろう、二人が喧嘩した時。
この二つの過去回想を見ると、どうしても思わざるを得ないんですよね。
炭治郎は自分を守ることは一切しない子だよなあ・・・と。
心も、身体も。
そんな炭治郎の事を、舞台裏を明かす形で禰豆子から語ってもらいたいです。
とまあ、禰豆子の自我が戻ったことについて色々と述べてみましたが、私が最も言いたい、かつ注目している件について述べることで今回の感想は終わりにしたいと思います。
自我が戻ったという事は―――
「自我を取り戻すよりも重要で優先すべきこと」が完了したのでしょう。