プレゼント

 実家猫のちゃめが、夜中にゴキブリを捕まえて父の枕元に置いておいた、と書いた。猫には、獲物を主人のところへ持ってくる習性がある。獲物を自慢したいからだとか、主人への贈り物だとか言われているが、本当のところは猫に聞いてみないとわからない。そもそも、人間のことを主人と思っているかさえ疑問である(たぶん思っていないだろう)。
 実家猫のデビンちゃんは非常に無気力な猫で、一日二十時間近く寝て暮らしているが、昔一度だけ、りっぱなカマキリを捕まえてきたことがある。突然ベランダから部屋に飛び込んできたかと思うと、はい、とばかり巨大なカマキリを私の目前に置いた。ちょこんと獲物の前に座って、こちらの顔を見上げている。びっくりして、こんなものを獲って来てはだめだと叱ろうとしたが、ふと、猫はプレゼントのつもりなのだから叱ってはいけないという話を思い出し、デビンちゃんどうもありがとう、でももう獲って来なくてもいいからね、と言って、パニック状態のオオカマキリを拾い上げ、ベランダのそばの木の上へ放した。驚きはしたが、デビンちゃんがプレゼントをくれたのは嬉しかった。しかし私の言葉に気を悪くしたのか、ただ無気力だからか、それ以来デビンちゃんが何かを獲って来てくれることはない。
友人Tの家猫は、イモムシをプレゼントしてくれたそうである。Tはイモムシが嫌なので、猫がくれた黒っぽいイモムシを窓から捨てた。すると猫は、なんだ気に入らないのか、と今度はもっと大きな、鮮やかな緑色のイモムシを捕まえてきた。仕方がないのでTは猫に礼を言って、猫は満足したらしい。
小学校のとき担任だった先生はネズミが大嫌いで、それは子供の頃飼っていた猫が、殺した血だらけのネズミをよく見せに来たからだと言っていた。
我が家も古い家で、ネズミがいる。時々、タッタカタッタカ天井裏を走る音がする。そして、どうやら押入れのどこかに天井裏に通ずる穴があるらしい。押入れにしまっておいたみゆちゃんのドライフードの袋が切り裂かれ、床の上には長さ一センチほどの円柱形をしたネズミの糞がぱらぱら落ちていた。
みゆちゃんは、何も獲って来たことがない。この猫の習性が自慢のためだとすると、みゆちゃんは控えめで奥ゆかしい猫だということになるが、普段の様子からしてそうとは思えない。ネズミやゴキブリを獲って来られると困るけれど、何も持って来てくれないのは少し寂しいような気もする。


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