お猫サマのために

 かわいいネズミの起き上がりこぼしや、鈴の入った小さなボール。これらは猫のおもちゃである。スーパーやホームセンターへ行くと、ぶらりと寄ってしまうペットのおもちゃ売り場。色とりどりのさまざまなおもちゃが所狭しと並んでいる。
 人間が見るに楽しそうなものばかりなので、きっと喜ぶだろうと買ってしまうのだが、家に帰って猫にあげると、これが喜ばない。ちょっと手に取ってみるのはいい方で、たいていがしらんぷり。買ってきたおもちゃらしいおもちゃよりも、ごみみたいな物の方が面白いのである。たとえばビニタイ。パンの袋などをねじって止める、短い針金が入った金色のものだが、床の上を滑らして、いつまでも飽きずに遊んでいる。紙袋の取っ手など、ひもの切れ端。これも滑らせて遊ぶ。空き箱。引っ掻いたり、中に入ったり。例を挙げるといくらでもあるが、いわゆる「猫のおもちゃ」ではあまり遊ばない。
 これは一歳の息子にもあてはまる。何かおもちゃを買ってあげても、あまり関心を示さないことがある。息子のおもちゃ箱には、いらなくなったCDや、ポテトチップの空き筒、壊れたマウスなど、おもちゃらしくないおもちゃが結構入っている。
 人間の好みと猫の好み、また、大人が面白く思うものと子供に受けるものの間にはちょっとした隙間があるようだ。そうわかってはいるものの、今度こそはとついつい買ってしまうのである。
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