寄生虫あれこれ

 カマキリのお尻を水に浸けると、黒いひも状のものがにゅうっと出てくる。ハリガネムシである。小学校の頃、クラスの男の子たちがカマキリを捕まえて、よくハリガネムシを出していた。ハリガネムシが出たあとのカマキリがぐったりしているように見えたので、私が「出したらだめなんじゃないの」と言ってみたら、クラスメイトは「ハリガネムシは悪さをするから出した方がカマキリのためなのだ」と反論した。ハリガネムシがいい者なのか悪者なのか、カマキリとハリガネムシは共生しているなどというガセネタも回ったりして、小学生の私はよくわからなかったが、ハリガネムシは悪者である。
 水の中で生まれたハリガネムシの幼虫は、まず水生昆虫に寄生する。そしてその水生昆虫をカマキリが捕食すると、今度はカマキリの体内に寄生し成虫となる。成虫になったハリガネムシはカマキリを水辺に誘導する。カマキリが水辺にたどり着くと、ハリガネムシはカマキリの腹を破って水中に脱出し、そこで交尾・産卵する。
 宿主を操って思い通りに誘導するとはまるでホラー映画みたいだが、この誘導のメカニズムは未解明らしい。クラスメイトがやったように、人為的にお尻を水に浸けた場合も、やはり腹を食い破るのだろうか。それとも数十年前のあのハリガネムシは、肛門からするっと出たのだろうか。
 猫にも寄生虫がいる。うちの猫は全員がノラ出身なので、なんらかの虫を腹に持っていることが多かった。
 まずはネコ回虫。戦後の困窮期を経験した人にとっては懐かしい寄生虫かもしれない。デビンちゃんの便の中に、白く細長い虫がうねうねとのたくっていた。ネコ回虫は、糞便と一緒に出た卵が、毛づくろいの際に再び口に入ってしまったり、生肉を食べることによって感染する。
 猫がお尻からゴムひものようなものをぶら下げていたら、それはマンソン裂頭条虫である。条虫とはサナダムシのこと。これは長い。体長が二百五十センチになるという報告もある。外飼い猫のチャプリが、1メートルを超えるサナダムシをお尻に引きずって帰ってきたときには、ぞっとした。虫のからだの上半分はまだ猫の体内にいるので、使い捨てのゴム手袋をはめてつかんで引っ張る。たいていちぎれる。猫を外飼いしている人なら、こういう経験はそれほど珍しいことではない。友人も木の枝で巻き取ったと言っていた。マンソン裂頭条虫は、幼虫の寄生しているヘビやカエルを食べると感染する。
 瓜実条虫というのがいる。友人Kは愛猫・太郎と毎晩ひとつの枕で仲むつまじく眠っていた。ある日、枕の周りになにか米粒みたいなものがぱらぱらと落ちているのに気づく。なんだろうこれは。なぜこんなところに。怪訝に思いつつも、たいして気にもとめずにいた…これは瓜実条虫の体の一部がちぎれて猫の体外に排出された片節というものである。瓜実条虫の感染経路はノミである。条虫の卵をノミの幼虫が食べる。ノミが成虫となって猫にとりつき、そのノミを毛づくろいなどで猫が食べてしまい感染する。
 実家猫のネロも、やはり両親の枕で寝ていて、この片節をばらまいていた。これが虫の一部だとわかって皆びっくり仰天。猫を飼っているといろんなことがある。猫の寝床に米粒状の物体が散らばっていたら、注意されるのがいいだろう。
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