みゆちゃんの夜遊び

 箱入り娘だからと、みゆちゃんの夜遊びは禁じていたのだが、この夏のはじめ頃、夕方ひょいと庭へ出てしまいそのまま暗くなるまで遊んでいたのがきっかけで、うやむやになってしまった。夜遊びと言っても庭で遊ぶだけで、うちの庭は周りを高い塀が囲んでいるから外へ行ってしまうことはない。また、とくに夏の日は昼間暑くて外で遊ぶことができないから、門限を十一時に決めて夜遊びを許すことにした。
 部屋の明かりに集まってくる虫などが日中よりも多いのだろう。みゆちゃんは追いかけ追いかけ、大はしゃぎで走り回る。せまい庭を右から左へ駆け抜けたと思ったら、次は左から右、さらに木に駆け上がって飛び降りる。こんなに全身で楽しんでいる姿を見ると、今まで禁止していて悪かったなあと思う。
 みゆちゃんが塀の下の雑草が生えた辺りへ飛び込み、ごそごそやっていると思ったら、庭の中央へ歩いてきて、口にくわえていたものを置いた。何かを捕まえてきたようである。きちんと座って、その捕まえてきたものをじっと観察している。同じようなことを以前実家猫のデビンちゃんがやっていた。どこかからアマガエルを捕まえてきて、部屋の真ん中に置く。カエルがぴょんぴょん跳ねて逃げるのを眺め、カエルが部屋の隅っこまで行くとすかさず捕まえて、また部屋の真ん中に置く。カエルが跳ねるのが面白いのである。
 みゆちゃんは何を捕まえたのだろうと、庭に降りて見に行った。みゆちゃんの視線の先にいたのは、ヤモリのこども。かわいそうに、すでに尻尾が切れている。みゆちゃんには悪いが、手を出そうとするみゆちゃんを抑えてヤモリを横取りし、手のひらに隠して木の高いところへ逃がした。不服顔のみゆちゃんだったが、あきらめて別の遊びを探しに行った。
 今日もみゆちゃんは、手の届くはずのない塀の高いところにいるヤモリを獲ろうと、頑張っている。
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