お散歩ポチ

 ポチは父と散歩へ行くのが大好きだ。ポチとは犬ではなく、実家の猫である。
 父が近所へ買い物に行くときなど、ポチはたいていついて来る。とっとことっとこ、短い足で歩調をあわせ、道の端っこを父と平行に歩いていく。建物と建物の間などにいくつかポチ指定の避難場所があって、車や自転車が通るとそこでやり過ごす。途中、道のはずれで寝転がって父にお腹をなでてもらったり、散歩はなかなか進まない。
 家の前の道路をしばらく行って、大通りに出るところまで来ると、ポチは止まる。そこから先へは一緒に行かず、少し手前の避難所で父を待っている。建物の間から首だけひょいと出して、様子を窺っている。
 父が買い物を済ませて戻ってくると、30メートルほど手前でその姿を認めて、にゃーと大声を上げて走ってくる。帰り道は父の横にべったりだ。このときの歓迎の度合いは、父をどれくらい待ったかに比例する。父がすぐに戻ってきたときには感動も薄い。父を見つけてものそのそ歩いてくるだけで、帰り道も、父のうしろを道草食い食い、離れてついて来る。
 用事があって出かけるとき、父はポチに見つからないよう忍び足で家を出る。見つかると、ポチがついてきてしまうからだ。見つかってしまったときにはしかたがない。やむを得ず、父はいったんポチと散歩に行き、帰ってきてから出直す。しかたがないと言いながら、父はそんなポチをとても可愛がっている。
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