望子のただいま稽古チュッ!

稽古、公演、プライベート
・・・オバサン役者、木村望子の日々。

ウラ話・稽古場編・・・たかが小道具、されど・・・(その5)

2013-09-14 00:02:58 | 舞台・ウラ話

老人がアメリカに暮らす妹、文代に、
1年前に送った、長い長い手紙。

この重い意味のある小道具をどうしたものか。

読み合わせの頃から、
ずっと頭を悩ませていたことでした。


普通、小道具は、
使う役者が用意して、管理もします。

特に、手紙などは、持ち道具とも呼ばれ、
より、使う役者との結びつきが深いもの。

ということは、老人の妹・文代役の、
大塚みどりさんと私が、
手紙を用意することになる。


でも、そうじゃないな、
と思ったんです。


老人が、これまでの人生を振り返り、
その先にある痴呆という病におびえながら、

すべての思いを書き綴った手紙は、
やっぱりご本人に、

つまり、老人役の仙崎情さんに、
書いてもらうべきじゃないか。


このとてつもなくシンドい作業を、
言わば「人に押し付ける」ことに、
ためらいもあったのですが、
何よりの役作りにもなることは確かです。

よく、養成所などで、
自分の役の履歴書を書かせたりしますが、
それと一緒ですね。

頭で考えているだけだと、
あいまいなままで済むことが、
文章にするとそうはいかなくなる。

仙崎さんと、
養成所の子を一緒にしては失礼ですけど、
でも、誰にでも必要なことなので、

主宰にも相談して、
書いてもらうことになりました。



それから、出来上がりを待つこと、
・・・2週間。

それでも、手紙は現れません。

稽古場では、相変わらず、
白い便箋を使って、稽古が続きました。


そして、また1週間。

もう来週は小屋入りなのに、
今になって「書けない」なんて、
そんなことはないよね?

と、心配もピークにさしかかったとき、


封筒に入った、驚くほどの長い手紙が、
私たちの前に現れました。


パソコンで打ち込まれた、
長い長い文章を読むうちに、
思わず本気で涙が流れました。


兄さん、ありがとう。
まさか、こんなに心のこもった手紙を、
読ませてもらえるとは思わなかったわよ。

とりあえず、コピーして、息子・政伸役の2人にも渡し、
しっかり読んでもらいました。

あ~~~、待った甲斐があったぁ


といっても、芝居で使う手紙は、
やはり手書きのイメージということで、
今度は私が書き写すことに。

すごい量で、少し飛ばしながら書いても、
便箋にぎっしり7枚。


夜中に2時間以上かけて書き写し、
何部もコピーして、完成。

小道具は、使っているうちに、
濡れたり、破れたり、何があるかわからないので、
沢山作れるものは、
とにかく作っておくんですね。


それで・・・、

客席からは・・・、どうかなぁ。
「字が書いてある」くらいはわかったかなぁ。

この矢印の手紙なんですけどね。


でも、いいんです。
これで、兄さんも、私たちも、政伸たちも、
絶対に何かが変わったはずなので。


そう。
ウチのチームの政伸役、ムックくんは、
千秋楽のあと、
記念に手紙を持って帰ったくらいですから






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