愛知学院大学青木ゼミのブログ

愛知学院大学商学部青木ゼミの活動を報告するためのブログです。

読書

2010年09月09日 | Weblog
いつもは学生の読書にお勧めの本を紹介していますが,今回は最近私が読んで個人的に興味を持てた本を紹介します。

三宅理一『秋葉原は今』芸術新聞社,2010年。

かつては電気街,今はサブカルチャーの街として世界的に有名な東京秋葉原の発展史が書かれています。第二次世界大戦後の混乱期から最近の再開発までを網羅しています。秋葉原の魅力はバザール(市場)のような自然発生的な猥雑さですが,それは交通の便を利用した企業家・商人たちの鋭敏な感性と大胆な行動の結果出来上がったことがよく分かります。そしてそのバザールの担い手の新陳代謝が激しいことが魅力を増加させていると理解できます。

秋葉原では2000年代行政主導の再開発事業が進行します。IT,インテリジェント,産官学,デザインなどどこかで聞いたことがあるようなキーワードをちりばめた格好いい計画のもとに,高層ビルを複数建てる再開発事業です。2006年駅前に秋葉原UDXという高層複合ビルの開業でクライマックスを迎えました。

再開発が進行するなかで,秋葉原が変質を遂げている様子も描かれています。老舗家電店が衰退する一方で中国企業が進出していること,行政主導開発のコンセプトが古いこと,サブカルの担い手が中野辺りに移りつつあることなど。

まちづくりという言葉が,行政担当者,学者,ジャーナリストによって安易に使われていますが,まちなんて行政や学者が考えるほど簡単につくれるのか?と考えさせてくれる好著です。

最近秋葉原を訪れてみると,スーツ姿のサラリーマンと女性客が増えたこと,その人たち目当ての飲食店が増えたことに驚きました。かつて街の主役だったマニアやオタクたちは飲食には関心が薄かったので飲食店が育たなかったのですが,今は「普通の人」が増加したため,その人たちのニーズを充たす必要が出たのでしょう。そして中国人の団体客が増えたことにも驚きました。中国人相手の店舗も増えました。

この変化は再開発の結果なのかもしれませんが,秋葉原が本来持っている新陳代謝の激しさを示しているに過ぎないのかもしれません。個人的には「常に外に向って」いて,多様性を維持し,新陳代謝の激しさを見せ続けることが都市の発展には重要なのだと思っています。

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コメント
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