愛知学院大学青木ゼミのブログ

愛知学院大学商学部青木ゼミの活動を報告するためのブログです。

Quality

2012年05月27日 | Weblog
1980年代日本製品の優れた品質が賞賛され,日本企業がアメリカやヨーロッパをはじめ多くの市場を席捲し,日本脅威論が流布しました。ところが,現在私たちは,日本製品や日本企業が多くの市場で優位性を築くことができないでいる状況を聞かなければならなくなりました。

その理由の一つとして,日本製品の過剰品質が指摘されています。過剰に高い品質を維持するため,企業は高コスト体質になり,製品価格も高くなりがちです。価格面で優位性を獲得できなくなっています。しかも,過剰な品質は多くの市場では無駄と受け取られ,その点でも優位性を確保できなくなっているというのです。ガラパゴス化というのはこの状況の一面を示しています。世界市場で戦うことができなくなった,日本の消費者に過剰に適合した高品質日本仕様の製品のことです。

アメリカに滞在して,小売業経営においても同様,日本小売業者の過剰品質(サービス)を振り返ることができます。こちらの小売店では,日本の消費者や小売業経営者の感覚では,とても売り物にならないような商品を売っている例に出会います。食品,とくに生鮮食品が典型的です。野菜類はたいてい傷んでいます。野菜を買ってくると,まず行うことが,傷んだ部分を削って捨てることです。果物類も同様です。肉類は豊富ではあるものの,鮮度はよくありません。ちなみに,生の魚はほとんど売られていません。

また,店員の対応も日本と比べれば親切とは言えないでしょう。そもそも,店員の数が非常に少ない印象を受けます。百貨店でも,フロア中探さないと店員を見つけることができないことがままあります。

滞在当初は驚き,困惑しましたが,今は納得しています。なぜならば,安いからです。円高の影響がありますが,世界で最も豊かな国アメリカの食品や日用品の価格は,日本の50~70%程度という感じです。高級品に属する衣類や装飾品でもアメリカの方が安いでしょう。逆に言えば,日本の小売価格はずいぶん高いという印象です。日本の小売店では,きれいな設備内に鮮度の高い食品や品質の高い日用品が豊富にあり,知識あふれる親切な店員が多く居並んでいるが,価格は高い。

日本の小売価格の相対的な高さを引き起こす要因は様々存在するでしょう。ただ,主要な要因の一つが高い品質の維持であることは間違いないでしょう。それは過剰なのかもしれません。アメリカ程度に,ほどほどのところで消費者と経営者が納得すれば,もっと安い価格が実現するのかもしれません。

アメリカにおいて,日本よりも相対的に価格が高い分野を一つ見つけました。ほかならぬ大学教育です。ビジネス系の学部でも日本の2~4倍近い学費を学生は負担しなければなりません。その代り,日本でよく見られる大教室授業は非常に少なく,総じてどの教科でも教員の学生対応はきめ細やかです。大学卒の価値は日本よりは高いように感じますが,それはアメリカの大学では卒業するのが難しいのと,教育効果が高いと一般的に認められているからです。

日本の大学は国際競争力を持たないと指摘されて久しいのですが,それは過剰品質のためではなく,過小教育のためです。現在の私の暫定的な見解は,日本は流通において過剰品質の抑制を図り,大学教育においては逆に品質を高めることが肝要だということです。大幅な学費の上昇を招かない程度,学生にとっては「うざい」と思える程度の望ましい大学教育を模索する必要があるようです。
コメント
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