愛知学院大学青木ゼミのブログ

愛知学院大学商学部青木ゼミの活動を報告するためのブログです。

学生相互評価によるゼミナール活性化

2011年10月12日 | 名古屋マーケティング・インカレ
10月8日に愛知学院大学において日本商業学会中部部会が開催されました。そこで,名古屋マーケティング・インカレの運営に関わっている教員(青木,秋本,大崎,太田,大塚,為広,濱)が共同で,「学生相互評価によるゼミナール活性化」というテーマで,名古屋マーケティング・インカレを取り上げて,学生相互評価に焦点を当てたマーケティング教育の事例研究を発表しました。

名古屋マーケティング・インカレの特色はいくつもありますが,その代表的なものに学生相互評価があげられます。通常,学生研究発表会における評価は教員やビジネスマンからなる審査員が行います。しかし,名古屋マーケティング・インカレでは,参加している学生チーム間で互いに評価して,優劣を決める方法を採っています。本大会では,ブロック予選において,相互評価得点に基づいてブロック代表の優秀チームを決定し,決勝において,参加全チームが得点をして最優秀賞を決定します。そして,コメントも同時につけます。今年度からは,中間発表会で相互に評価してコメントを送り合うことにしました。ただし,得点を与えるのは本大会のみです。

専門を同じくする研究者が相互に評価する方法はピアレビューといって,研究の世界では基本的な評価方法です。研究の世界では,専門化が進んでいて,専門家コミュニティーの外部にいる人が専門的研究を理解して評価することが難しくなっています。また,研究の世界では通説が破棄されて権威がひっくり返ることがままあります。専門家コミュニティーの内部において,権威者が判定者になって研究の良し悪しを判定することは,通説とは違った研究を評価する際に困難さをもたらしがちです。そこで,専門を同じくする研究者が相互に評価する方法を用いるのです。学会などで日常的に行われています。

未熟な学生に研究者(それも上級者)と同じ流儀で相互評価をさせることにいろいろ問題が生じるのは承知しています。しかし,名古屋マーケティング・インカレでは,学生のモチベーション向上と評価眼の養成を目的として,あえて採用しています。モチベーションは評価されるとともに評価する立場に立つことで一層高まります。また,評価眼を持つことは,他人を評価するだけでなく,自分を評価することにも役立ちます。

今回,われわれは,学会発表のために,名古屋マーケティング・インカレを昨年度経験した学生と,今年度参加している学生全員を対象にヒヤリング調査を行いました。インカレに対する学生の本音を引き出して,大会運営・教育の改善につなげようと考えたのです。その結果を見て,われわれは相互評価の公正さに対する学生の認識に着目しました。

昨年度経験者と今年度参加者に間に大きな認識の違いがありました。昨年度経験者のほとんどが相互評価に不公正さが存在していると考えているのですが,今年度参加者においては公正だという意見と不公正だという意見が拮抗しています。昨年度経験者は点数評価をし,優劣のつく競争を経験したので,不公正に過敏になっているのかもしれません。今年度参加者はチーム間でコメントを交換し合うことはしていますが,点数による評価を行っていないので,そのような「マイルド」な態度に落ち着いているのかもしれません。

昨年度経験者の公正さの認識に関する回答を検討してみると,興味深いことが分かりました。「自分たちが勝ちたいため,有望な他のチームの評価をわざと低くする」「同じ大学のチームには甘い評価をしてしまう」「中間発表会で仲が良くなったチームには厳しい評価ができない」というような評価の状況を不公正ととらえ,それが昨年度起きたのではないかという指摘が多くありました。これはわれわれも常に想定している不公正さです。一種の機会主義的行動といってもいいでしょう。しかし,つぎのような主旨の意見にわれわれは驚きました。

「ゼミによって研究のアプローチや視点が違っている。自分と違うアプローチのチームに評価されると,きちんとした評価がなされないので(逆の場合も同様),低い評価をされて損をする可能性があるので不公正だ」「評価基準があったとしても人によってその捉え方や評価の重視点が違うので,それを統一化しなくては公正さが保てない」

われわれにとって,研究のアプローチや視点が指導教員やチームによって違っているのは当然のことです。アプローチや視点が違った研究や思考があるからこそ,社会を多面的に捉えることができるのです。アプローチや視点が一元化されていれば社会の発展はないとさえ思います。相手の研究発表が自分とはアプローチや視点が違っていても,着眼点や論理性などの点で優れている部分を見出すことは可能です。仮に,アプローチや視点の違うチーム同士の評価では,低い評価が生まれてしまう例があったとしても,それは数ある評価の一つとして捉えればよいわけです。また,同じ評価基準を用いても評価者によって捉え方や重視点が違うので,評価にぶれが出ることは当然です。人の評価というのはそういうものなのです。このような現象は社会のあらゆるところで散見されます。したがって,それらを不公正と考えることには戸惑いを覚えます。

われわれは,学問には様々なアプローチや視点が存在すること,そしてそういう多面性がある中で評価をし合う意義があることをきちんと教育する必要があるという認識で一致しました。12月の本大会までに各ゼミで,この問題について教員から説明があるでしょう。うちのゼミでも近いうちに説明する予定です。

なお,昨年度の経験者が不公正だと指摘した相互評価の結果ですが,これまでの大会の最優秀賞や優秀賞を振り返ってみると,われわれは妥当な評価だったと感じています。過去の大会の決勝を思い起こしてみると,私の印象では,論理に大きな破たんがなく,各評価基準において減点の少ない,バランスの良い発表をしたチームが最優秀賞を獲得しています。

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