松江市教委の指示で、「はだしのゲン」が、子どもが自由に読めない閲覧制限の対象図書となったことに驚きました。これまで自由閲覧できたものが、なぜ読めなくなったのか。そもそも蔵書として購入した時点では、子どもたちにとって有益な図書としての判断がされていたのではないでしょうか。その判断を否定し、閲覧制限を加えなければならないほど有害な図書と判断した理由はどこにあるのでしょうか。
マスコミによれば、その理由は 日本軍の蛮行が描かれ子どもたちに悪影響を及ぼすという考えからということです。しかしそれは大人の考えであって、これまで「はだしのゲン」を読んだ子どもたちが、その中から何を感じ何を考えたのか、本当に悪影響を与えた不良書だったのかどうかについて、謙虚に子どもの側に立ってその声に耳を傾けることの方が大切なのではないかと思います。
これまで、自由に読み接することのできた図書が、大人の一方的な判断や考えで 子どもたちから遠ざけられてしまうことに、大きな問題があるように思います。
大人には、さまざまな立場や考えがあります。日本軍の蛮行を 蛮行として認める人、認めない人。蛮行の場面が子どもたちに悪影響を与えると考える人、逆に原爆や戦争の悲惨さを知る機会となると考える人。作品にある 天皇の戦争責任を問うことに意義を唱える人、肯定する人。そういった違いはあるものの、原爆投下がどんなに悲惨な状況を招いたのかについては、理解を共有できるのではないかと思います。
子どもたちがこの作品から共通して受け止めるものも、原爆や戦争の悲惨さであり、平和の大切さや命の尊さなのではないかと 私は思います。