あぽいち

温泉とヨガ、たまに心臓外科医

ものまね

2012-02-09 22:53:19 | Weblog
以前にERASの話を少し出しましたが、先日、近森の入江先生が遊びにこられて、2夜ご一緒させていただいた。近森では全例とはいきませんが、基本的にオペ室抜管で当日からリハビリをスタートして翌日には歩行を開始するという方針でやられているとのことで、うちは遅れているなーと思った。まー、それにはスタッフがかなり充実していて、病院全体の理解がないと難しいとおっしゃってはいたが、ごもっともであり、一番大事なのは、何だかんだ言っても人なんだろうなと思った。少ないスタッフでは、いくら個人個人が優秀でも限界があり、スタッフがそろってこそ、色々なことにチャレンジできるのだと。
いろいろな壁が当っても、自分の信念を曲げずに、理想に向かって突き進んでいる入江先生には、ほんとに頭が下がります。
また、チャンスを掴むにはとにかく、上司の手技を100%まねしろと。手技が正しいかどうかは関係なくである。自分のまねをできない後輩に症例は預けないといっていました。
まー、まったくその通りであり、それはうちのボスもいつも言っている事で、それが一番の近道だと思う。
レベルが違いすぎて、上司のまねは自分にはできないから安全に安全にとか、自分の考えを通して、違うことをしていては、極めることはできない。
上司は自分より経験がうえであり、多くのトラブルも経験しており、その中でベストを思われる手術を確立しているのであり、それを自分のようなペーペーが、いじることは厳禁なのである。
上司と同じ手術ができるようになり、上司が自分の手術に入ってこなくなったときこそ、自分のやり方を出すときなのであろう。

いつかは

2012-02-09 22:43:17 | Weblog
低侵襲の手術というのが、今ではよく出てくるが、低侵襲とはなんぞや
心臓の標準的な手術での手術死亡率が数%となった今、次に目指すところは、術後の早い回復と社会復帰である。死亡率が低下したといっても、術後に寝たきりになったり、術前以下のADLになってしまっては、疑問が残る。
局所麻酔、小さい傷、胸骨非切開、心拍動下、常温、手術時間の短縮、無輸血など、いろいろとあり、どれもこれも侵襲が少ないのは確かであるが、いくら傷が小さくても、人工心肺を使わなくても、妥協したり、手術時間が長くなったり、術後の回復が遅くなったり、合併症を起こしたりするようでは、低侵襲ならぬ高侵襲である。つまりは、どういった手段でも良いが、術後の回復が早く、手術時間の短いものこそ、低侵襲と呼ぶべきなのではないかと思う。
まだまだ私自身、手術を終えるのがやっとのレベルで、偉そうな事は言えないが、術後の成績は落とさずに、できるだけ余計なことは省き、短時間の手術を目指していきたい。
それが結果的にはもっとも侵襲が低く、患者もスタッフも、病院も、お国もハッピーなのではないかと思う。
欧米では多くの手術は2時間程度で終わる。
いろいろなしがらみがあり、時間内に終わらせないといけないという制約や、術者が術後のケアにあまりかかわらない点から、手術に妥協したり、術後の出血や合併症などから、早期、遠隔期ともに成績が日本より少し劣るところはあるのかもしれないが、やはり、目標としては、標準的な手術であれば日本でも、2時間が目標である。
欧米人にできて、手先の器用な日本人にできないわけがない。
欧米人は血が止まりやすいからだとか、早ければいいというもんじゃない、早いのはもともとリスクが少ないからだと、以前は自分も思っていたが、それは自分に対するいいわけであり、自分の限界を決めてしまっていることになると最近では思っている。
しかし、手術時間にばかりこだわって、本来の目的を忘れてしまっては、本末転倒なので、あくまで安全で確実な手術が前提の上である。

84分

2012-02-09 22:26:51 | Weblog
先日は後輩がいませんでしたので、久々に単純なAAAを担当させていただきました。
やや肥満体型でしたが血管の正常もよく、順調に行ったなーと思ったが、終わってみれば10cmの切開で遮断30分、skin to skin 84分と良いテンポで手術が流れたと思います。
しかし、世界は広いです、トロントのデイビット先生はレジデント時代にAAAのskin to skin 45分でやってのけており、それがトロントにスカウトされるきっかけとなったという逸話があるのである。目指すはデイビット先生、同じ人間である、できないわけがない。
自分の手術で色々、見返してみて、まだまだ必要のない部分は多くある。
そういう目で見ると、あと15分程度は短縮できると思う。
まずは60分を目指して頑張るのである。

手術は早ければよいというものではないが、早くて悪いということは何もない。