あぽいち

温泉とヨガ、たまに心臓外科医

学生さん

2013-03-30 06:15:18 | Weblog
今週は循環停止症例が2例あり、指導医の先生におんぶにだっこというか、ここ掘れわんわん状態で、ご指導いただきました。
一例はDebakeyⅡ慢性解離60mmです。解離発症のエピソードははっきりしませんが、胸骨の骨折の跡があり、その真裏から解離していますので、おそらく外傷性の解離かと。
上行置換、脳分離併用しましたので、やや煩雑になりました。
バイオグルーで断端形成しましたが、思うように内膜と外膜がひっつきませんで、慢性の場合は仮性内膜が張ってしまいつるつるしているからなのでしょうか、それでもまー、合わせて縫って、分厚い血管ですので吻合は安心。学生さんたちが3人ほど見学に来られていて、順番で手洗いをしていただき、案の定お一人、ぶっ倒れて、あれあれとなった場面もありましたが、出血もなくて3時間5分にて終了。
もう一例は遠位弓部80mmで5-10mぐらいのプラークが上行からずーと繋がっている汚い症例で、送血に迷いましたが、どんな症例でも基部に近いところ数センチはプラークが付いていることはまずありません。大動脈弁からのジェットが当たるところですので、ここにプラークがつくことはないとのこと。それでも少しでも送血のジェットを減らし、プラークを飛ばさないようにということで、足と上行と2本で送血して、上行の送血管は先端を逆向きに大動脈弁方向に向けて23度までもっていきました。奥が深くて泣きそうになりましたが、ステップワイズ変法を教えていただき、吻合は楽チンで、末梢側からの出血はなし。順々に吻合して、LAD90%狭窄ありましたので、最後にLITA-LADを追加、ポンプ離脱後に末梢側周囲の気管支動脈から1本出血がのこり、深くて手が届かず、これを止めるのに苦労しましたが、その他はさほどの出血はなく、6時間10分にて終了です。
大血管の手術はもっとも興味を引く手術ではありますが、合併症も多く、脳分離も加わり、手術も煩雑で、出血させたらエンドレスということもあるので、ストラテジー、タクティクスともに、なかなかどうして、大変なものであります。

2時間の壁は

2013-03-11 19:23:45 | Weblog
本日は単純なAVRで、お友達を呼んで前立していただきました。
手洗いNS含め、だいぶスタッフが慣れてきたこともあり、skin to skin 140分で終了。
もう20分で2時間の壁があるが、10分は大動脈の閉鎖方法、現在は帯フェルトで2層で縫っているので、15-20分ぐらいはかかるかな。もっとシンプルにすれば5-10分ぐらいは短縮されると思っている。あとは心肺のウイニングかな、今はnon-workingの時間が長すぎかな、術中はよっぽど遮断時間が長くなった症例以外は、カテコラミンは使わない主義なので、自然に任せていると、やはり少し時間がかかる、おそらくここでも10分ぐらいは縮まる。あとは心筋保護の量かな。
短縮できるところはわかっているのだが、1人でやっている手前、再開胸は絶対にありえないし、トラブルはご法度ですので、まー、血が出なくて、安全に行える方法が一番ですので、あまりこれ以上は求めない方が良いかな。

帰室後はなんか、Kが高くて必死に下げましたが、2時間後に無事、抜管となりなにより。

CTOは

2013-03-08 08:37:58 | Weblog
先日はK大学の教授がご内密に遊びにいらして、手術の指導をしていただきました。一人では不安ですので友人のM先生もお呼びして。
本来ならば専門分野の症例をと考えておりましたが、なかなか良い症例がなく、結局、単純なAVR+CABG症例となり、せっかく来ていただいたのに申し訳ないあまりでした。
LADがCTOであり、本来ならば当然ITAを使うべきなのですが、脳梗塞のリハビリ退院直後であり、両下肢は腸骨動脈で完全閉塞という、全身動脈硬化の強い方でしたので、年齢も年齢ですし、友人Mに恐ろしい話を吹き込まれ、検討のうえSVG-LADというバイパスになりました。ITAは両側ともに足にコラテを出しており、OPCABなら問題ないのでしょうが、ポンプ症例となると足の虚血が心配で、膝下まで閉塞している方でしたので、何かあってもすぐにバイパスというわけにはいかない症例でしたので。術中は足背動脈にドップラーを貼り付けて、体外循環は拍動流にして、適宜、ドップラーで足の血流を確認しながら手術を進めました。上行は石灰化が少しありフレキシブルにて石灰化に併行になるよう斜めに遮断で対応。
CTOですのでポンプ載せてbeatingにてSVG-LADと吻合しましたが、CTOの血管は開けてみたら分厚くて、バックフロー少なめでありました。結果的にはこの時に気が付くべきでしたが、後で縫い直す羽目に。
止めて、AVRして、中枢吻合して70分、ポンプ110分で降りて、閉める前にグラフトのドップラー聞いたら、聞こえない、、、、、。
さすがにLADなので、縫い直す覚悟を決めて、吻合部の5mmほど中枢でSVGを離断してみたら、中枢の血流はOKだが、末梢からのバックフローが少なく、LAD末梢側にゾンデを入れると吹いてくるのだがすぐにでなくなり、末梢側に狭搾があることが判明、仕方なく、2cmほど末梢で再度吻合しなおして、今度はドップラー良好でことなきを得た。
術前のCAGでもコラテからうつってくるLADはそこそこしっかりしているように思えたが、狭搾の程度までは読み切れていなかった、やはりまだまだ読みが甘かったと猛反省。結局OPCABになってしまった。
心配していた足も、頭も問題なく、3時間で抜管で、今回もいろいろ学ぶことが多い一日であった。