あぽいち

温泉とヨガ、たまに心臓外科医

特発性左室瘤

2013-02-15 08:37:03 | Weblog
先週はもう一例、特発性の左室瘤がありましたが、これまでたくさん見てきたものの、自分で左室にメスを入れすのは初めてですので、前の晩はエアー手術の繰り返しで、緊張して眠れなかった。
きっと、もう20年ぐらい前になるのでしょうが、まだ、左室形成がそれほど行われていない時代にボスが初めて左室を切るときは、ほんとに恐ろしかったと話していたのを思い出しました。
今では適応を間違わなければ、手技自体は確立されたものですので、比較的、標準的な手技となっていますが、それでも、やはり初めての時は恐ろしいものです。
冠動脈はつるつるなのに、なぜか心尖部に5*5*3cmほどの左室瘤が、、、ネックもあって、もしかして仮性?かとも思いましたが、開けてみたら、癒着もなく真性瘤でありました。
とはいっても、外見上、scarになっているのは2-3cm程度で、術前の画像所見と違い、だまされそうになりましたが、よーく壁運動を見ると、5cmほどの範囲で、くびれを持って収縮期にぺこぺこ拡張していました。瘤を開けてみると、やはり、直径5cmほどの範囲で壁はペラペラ、乳頭筋を確認しながらパッチのラインをマーキングしました。基本的にBeatingのままできる手技ではありますが、術前にNSVTもありましたので、しっかりクライオをかけるために一度止めて、クライオをかけました。
パッチラインはくびれがありましたので、縫縮はせずに全周性に12本のマットレスをかけて、遮断解除して、2重にした牛心膜パッチで閉じるのみとしました。パッチラインに前乳頭筋が入り込んでましたが、外からかけるほどでもなく、中から一緒に拾う感じでOkでした。
最後に瘤壁を閉じて、屋根は今回は残った牛心膜にしたところ、柔らかいのでフェルトよりはフィッテイングよさそうで、ピタッと張り付いて、出血もなく終了です。
単独手術でしたので3時間半ほどで無事終了です。
術後はアンカロンとβブロッカーをしっかり入れているのもありますが、不整脈もなく順調です。

月末にも左室形成がありそうですので、良いイメージとなりましたが、そちらはCABG3本とMVPもくっついているICMなので、一日がかりとなりそうです。


valve cut後のSVG

2013-02-15 07:07:50 | Weblog
先週のOPCABの造影をしましたが、4本ともpatentで一安心。
LADはdiffuseな病変だったこともありますが、やや狭窄の中での吻合となっており、吻合部の末梢側にも一か所狭窄が残る形となり、冠動脈の切開部位が悪かったと反省。
吻合中に中枢側からも末梢側からも血が出てこなかったので、おかしいとは思ったのだが、思い切ってもっと末梢側まで切り開いて、onlayにすべきだった。
ただ、内胸動脈からはNOが出てくれるので、遠隔期に期待する。

SVGはvalve cuttterでvalveをcutした症例で、術後の造影は気持ちの良いものです、手ごたえとしては2か所のvalveをcutした感触でしたが、造影でもやはり2か所でSVGの膨らんでいるところがあり、valveがあったと思われる部位ですが、よどみなくきれいに流れていましたので、よさそうです。
valve以外の部位を損傷したり、刃の切れが悪いので、無理に引っ張って、SVGを引きちぎってしまわないように気をつけなけれれば行けませんが、続けてみようかと思います。

完全内視鏡下

2013-02-15 06:52:03 | Weblog
先週のMICS-MVPは5cmほどの皮膚切開で、開胸器はかけずに完全内視鏡下で行いました。さすがに私には荷が重く、指導医の先生の手技を見させていただきました。
ここまで来ると、ほんとに低侵襲という気がしてきます。ポートは5mmを2本追加するだけですので、太いポートを何本も突っ込むロボット手術以上に低侵襲かつ、いろいろな面で現実的な手技かと思われ、痛みの訴えもほとんどなく、1週間で退院である。
今のところ、そこまで行くことが当面の目標と思われるが、自分にはMICSの経験も、MVPの経験もまだまだ不十分で、一度に両方というわけにはいかないだろう。
現在、標準的な心臓手術はほぼ完成形にあるといってもよく、ここに新たな目標が持てるというのはありがたいことである。