金融マーケットと馬に関する説法話

普段は資産運用ビジネスに身を置きながら、週末は競馬に明け暮れる老紳士の説法話であります。

【デジタライゼーション】ロボアド会社や、ネット保険会社で起きていること

2019-05-27 07:24:07 | 金融マーケット

 日本ダービーが終わり、脱力感が酷いのですが、気を取り直して「デジタライゼーション」のお話に戻りたいと。


 前回、汎用の金融商品は、極限まで販社コストを削るために、ネット系での販売が主流になっていくと申し上げました。この事象は、生命保険商品や損害保険商品でも同じことが言えます。

 例えば、自動車保険。最も汎用な損害保険商品ですが、ネット系の保険会社で契約すると、ビックリするくらい保険料が下がります。最初は独立系ネット保険会社の独壇場でしたが、さすがに大手損保も放っておけず、自分の100%子会社を通じてネット保険を販売しており、従来の契約がどんどんネット契約に入れ替わっています。保険収入は減りますが、店舗や人員削減と併せて実現できれば、経営を揺るがすことにはなりません。むしろ、既存の契約を守ろうとして、顧客基盤を失っていった都銀や四大証券よりはマシと言えます。

 ただし問題は、ネット系同士の過当競争。あまりに保険料のダンピングが進んだため、殆どのネット系保険会社は利益を出せていません。本当にカスカス状態なのです。シェア争いで競争が過熱するのは日本人の特長ではありますが、向こう10年黒字化の目処が立たないとなると、さすがに何のためのビジネスか? ということになります。損保会社にとって、かつてのドル箱であった自動車保険は、かくしてペンペン草も生えないコモディティ・マーケットと化してしまいました。

 同じ事態になりそうなのが、投信のロボアド会社。大手2社は全く黒字化の目処が立っていません。起業家たちからすれば、「スタートアップ市場というのは、所詮こんなもんですよ!」ということかもしれませんが、先行投資がすでに終わているにも関わらず、その償却スケジュールが終わっても、黒字化の目処が立たない世界は、ビジネスの範疇からは逸脱していると言っても過言ではありません。地銀をはじめ、多くの出資者たちの苛立ちは想像に難くありません。

 「過当競争」恐るべし、です。日本の金融機関にとって最大のハードルは、この「過当競争」なのかもしれません。


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