金融マーケットと馬に関する説法話

普段は資産運用ビジネスに身を置きながら、週末は競馬に明け暮れる老紳士の説法話であります。

【デジタライゼーション】資金決済の話 その2

2019-05-29 07:15:52 | 金融マーケット

 仮想通貨も活用した数十万円までの少額決済のマーケット、すでに中国ではアリババ・テンセントの得意分野ですが、国内において、ここへきてメガバンクが多額の投資を行っています。狙いは何でしょうか?


 狙いは、個々人の毎日の消費行動をデータとして蓄積することと言われています。これらのデータを活用して、あるいは第三者に利用させて、収益の源泉にしようということ。これはアマゾンに代表されるように、巨大なデータを活用して、すべての分野の販社として成功した事例のあとを追いかけようとするもの。恐らく「データを集めたものが勝つ」というコンサル会社の言葉を信じているのでしょう。

 しかし、本当にそうでしょうか? アマゾンが巨大なデータを活用したのは事実ですし、そこに気づいた最初の成功者だったことも事実です。しかし、成功の要因の第一が「データ保有者」だったことなのでしょうか? むしろ、巨大データをAIで読み解き、何と何に何の理由で因果関係があるのか?という仮説を立てることに秀でていたからではないのでしょうか?

 今後、日本の3メガだけでなく、消費データを集積して、それを財産にしようとする動きは活発化すると思います。すなわち、リトル・アマゾンがたくさん発生する訳ですが、彼らがアマゾンと同じように成功するとは到底思えません。なぜなら、「仮説力」は人間特有の能力であり、AIには代替できないからです。そして、自分だけでは使いこなせないので、彼らが集めたデータは、お互いに活用を許諾して共有財産のようになっていくと想像しています。その段階になると、データを保有しているだけでは付加価値を付けたことにはなりません。またディープ・ラーニングの類のAIも、すでに使用を広く開放されていますので、AIを使用するだけで付加価値を付けたとは言えなくなります。データとAIを活用した上で、神羅万象の因果関係を読み解く「仮説力」のある人間こそが、付加価値の源泉になるのだと自分は考えています。

 現在起きている「少額の資金決済マーケットにおける主導権争い」は、膨大なコストを使った挙句、実はあまり意味のない闘いだったとして、将来、歴史に名を刻む気がしてなりません。


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