このテーマは7月18日に書いたので、もう書くつもりはなかったのですが、若干の感想を述べたいと思います。
隣国は、朝鮮戦争以来、民主主義と非民主主義の最前線基地として、アメリカはもとより、日本にとっても重要な役割を担ってきた国です。ベルリンの壁が崩壊した後は、デモクラシーの最前線基地の位置づけから、近い将来崩壊すると想定された北朝鮮を併合する主体として、政治・経済体制の強化が求められる存在に変化しました。
ところが、特に直近3年間、北朝鮮が政治的にも軍事的にも息を吹き返した結果、むしろ隣国の方が、北に飲み込まれるリスクに直面する事態になってきました。一番のトリガーは北朝鮮による核開発だった訳ですが、もう一つの主因は、隣国の国家体制があまりに脆弱であることにあります。
デモクラシー国家が強い基盤を維持するためには、強い愛国心と自己犠牲の精神を持ったエリート集団=ノブレスオブリュージュの存在が不可欠です。隣国でいえば、優秀な官僚組織と経済エリートの存在です。しかし、軍事政権終結からの20数年間で、優秀な官僚組織は育たず、経済についても、即効性の高い分野での業績を求めるばかりで、地道に基礎経済を強化するような投資は貧弱でありました。自動車産業でも、肝心のエンジン分野や重要部品のほとんどが日本をはじめとする外国製であり、スマホについても、キーになる部品の多くが日本の電子部品メーカーからの輸入により成り立っています。
現状を憂う人物の一人、姜尚中東大名誉教授は、日曜日のTBS番組で、「この状況はいつか越えなければならないハードルだった。韓国経済が、真に地に足をつけた基盤を構築するためのきっかけになることを期待したい」とポツリおっしゃっていました。自分も、隣国が真に独立した、強い経済基盤を持つ国へ発展してくれることを期待します。最悪なのは、この地域が非民主主義国家に飲み込まれる事態ですので、そうならないような強い経済基盤が必要だと思います。
それにしても、このタイミングで、やれ「北朝鮮との共闘」だの、「軍事協定の破棄」だの、安易に口にできる神経は、それこそ無責任と言わざるをえないですし、「隣国の安全保障」「国民の自由」を危うくする行為と言われても仕方がありません。隣国に、「真のノブレスオブリュージュ」が現れん事を祈るばかりです。
そして日本の官邸に対しても申し上げたい。文政権だけに狙いを絞った作戦だったのかもしれませんが、この状況は、かえって日本の安全保障をも危うくしています。どう収束させるつもりでしょうか? 自らの力で収束するシナリオがないとすれば、これもまた無責任としか言いようがありません。