金融マーケットと馬に関する説法話

普段は資産運用ビジネスに身を置きながら、週末は競馬に明け暮れる老紳士の説法話であります。

【民主主義の賞味期限(番外編)】 アフガニスタンの現状を憂い、想う。

2021-08-28 08:16:58 | 金融マーケット

 現在のアフガニスタンの混乱ぶりを見るにつけ、あらためて「民主主義=デモクラシー」という政治体制の不安定さと、これを安定化させるための必要条件「ノブレス・オブ・リュージュ」の存在が、いかに大切かを噛み締めているところ。

 このBlogでも、「民主主義の賞味期限」というシリーズで、何度も「ノブレス・オブ・リュージュ」について論じていますが現代デモクラシーの総本山であるアメリカその重要性を無視して、アフガニスタンでもイラクでも、「単に選挙でリーダーを決めるようになれば、民主主義は定着する」とでも考えていたのでしょうか? もしそうならば、何という愚かしさでしょう。

 

 私の定義する「ノブレス・オブ・リュージュ」とは、「デモクラシーの理念に共鳴して、その政治・国家体制を、命をかけて支えてくれるエリート層」を指します。

 近代デモクラシーがスタートしたフランスイギリスにおいても、当初は過激すぎて一般市民からも受け入れられなかったデモクラシーが、貴族層の中に、デモクラシーが掲げる自由や博愛、さらには国民主権といった理念に賛同する支援者の数が増えていって、デモクラシーの基盤を支える存在になってから、安定化しました。このエリート層は、教養と財産、また軍事への影響力も有していたため、民主主義のリーダーを生む予備軍となりましたこれによって、市民は、この中から国のリーダーたちを選ぶだけで、民主主義が強固になって発展するようになっていったのです。

 アメリカでも、南北戦争前後になって、ようやく富裕層が確立して、その中から近代デモクラシーの理念を支えるエリートたちが育っていきました南北戦争とは、旧来の領主的支配者の南部パワーと、近代デモクラシーの旗手となった北部の工業エリートパワーの闘いであり、南北戦争後に、アメリカのデモクラシーは安定化することになります。

 アフガニスタンでも、イラクでも、同様のはずで、デモクラシーを定着させるためには、ただ選挙を行うだけでなく、近代デモクラシーの理念を支えてくれるようなエリート層を確立させることこそが重要だったはず。このエリート達が、長くリーダーとして定着するためには、当然ながら、経済的基盤、教養、そして人望などを集めやすい人たち、すなわち、欧州ならば貴族層、イスラム圏であれば、旧豪族や軍閥、または宗教的リーダーたちが「ノブレス・オブ・リュージュ」候補として相応しかったはず。しかし、こうしたエリート層を全く育成しなかったばかりか、育成できないうちに、アメリカの事情で軍を撤退する事態に。現在の混乱状況は必定であり、アメリカが招いた悲劇と言えます。

 いや、そうしようとしたのだけれど、上手くいかなかったのだ、と言うのであれば、経過を見せて欲しかったと思います。確かに、なぜ中国や中東諸国で民主主義が定着しないかというと、支配者である中国共産党幹部も、中東の王族たち「なぜ、わざわざ、『愚民たち』に自由と権利を与えるのだ?」という考え方だから。「『愚民』には、自由や権利ではなく、『施し』を与えれば良い」という発想から抜け出せない因習・伝統が、この地域には染みついているのは確かです。

 

 しかし、難しい地域ではあるにせよ、王族のいないアフガニスタンやイラクであれば、「ノブレス・オブ・リュージュ」の存在を確立するチャンスはあったはず。現代デモクラシーの総本山として、何とも、ここ20年間のアメリカの無策ぶりが悔しくて仕方ありません。


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