駅前糸脈

町医者をしながら世の中最前線の動きを感知、駅前から所見を発信。

雨の朝、濡れた舗道

2009年02月20日 | 身辺記
 今朝はうっかり15分ほど寝過ごしてしまった。朝のざわめきと光が雨でマスクされていたのだ。東北日本海側や北海道では雪なのだろうか。あの雪の朝の静けさには何十年もご無沙汰だ。思い出せば懐かしいが、雪国の人には美しくも鬱陶しい雪化粧なのだろう。
 当地の雨は冷たいといっても、もう冬の厳しさは感じさせない。飛び始めた花粉に悩む人や植物にはありがたい雨だろう。それでも朝早く、冷たい雨の舗道を急ぎ足で歩くのはちょいとつらい。遅れたのであわてて医院を開けても、患者さんの出足は悪く誰も待っていない。入り口に頂いた花(名前を知らない)がもう一ヶ月になるのにしぼみもせず、元気に咲いている、健気だ。
 高血圧で通院している同年配の飲み屋の親父さんがやってきて、暇なので話し込んでいった。もうどうしようもないと嘆く。景気が悪い上に勤め人の生活様式が変わってきたのだ。おまけに2月と来れば泣きたくなる状況らしい。繁華街飲み屋ビルの2階では転職といっても難しいだろうなあ。何かアドバイスをと思っても町医者の商売の才覚など知れている。芸もなく、お大事にと申し上げる。
 不況の影響は町医者にも及んではいるが、私のようにほとんど借金がなくなり地盤のできている医院では、数%の減収はさほど応えず今のところ深刻さはない。直接よりもむしろ、不況の不安は患者さんの話から間接的に感じる。おそらくボディブローのように不景気の損失は徐々に効いてきて、いづれ我々町医者にも大きな影響があるかもしれない。こんな時にこそ、玄関の花のように変わらず良質の医療を提供したい。
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鉄は熱いうちに

2009年02月20日 | 世の中
 厚労省が医師の卒後研修期間を一年に縮めようとしている、高久さんともあろう人がなぜこうした朝令暮改に同意されたのか理解しがたい。
 電気製品や薬品は市場に出るまで十年の歳月を掛けて開発される。人間を診る技術者である医師を育てる方針がたかだ数年で朝令暮改とは拙い。医師不足解消の対策として急遽変更されたに過ぎまい。まだ現在の卒後教育制度の結論は出ておらず、ようやく軌道に乗ったところではないか。厚労省が医師不足をどうするのかと詰め寄られた時、対策として示すために絞り出された苦肉の策に思える。 
 一年研修期間が短くなったところで焼け石に水。新しく医師になる人達もその患者になる人達も目に見えない迷惑を被るだろう。こんな付け焼き刃をするなら看護師や介護士と同じように東南アジアやインドから医師を呼び寄せてはどうか。
 朝令暮改の批判に対する予想される答えは、優れた医師になるのは本人の努力次第、制度の変更など大きな支障ではないということだろう。私は教育の専門家ではないが、技術者にとって現場に出た年齢と始めの数年がいかに大きくその後の伸びに作用するかは実感している。大きな声では言いにくいが、三十過ぎて突然医療を目指し四十近くになって医師になられた方は、なかなか優れた臨床医になれないと聞く。鉄は熱いうちに最善の方法で打たなければならない。
 都市部への集中を制限するのには賛成する、人生至る所に青山あり。
 「先生、往診して居るんですか!。往診なんて割にあわないでしょ」。三十そこそこの勤務医がほざく。「君はなんで、医者になったの?」。返事がない。こういう医師に数年、地方の町で臨床三昧を経験してもらわねば。
コメント (2)
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