鈍足台風が近づいて今朝は厚い雲の曇天である。日差しがない分多少気温は低目のようだが、湿度は90%以上ありそうな、じとっとした空気が市街地を覆っている。
半世紀以上前の話だが、養老院というのがあって身寄りがなく自活できない高齢者を収容していた。どういう風の吹き回しかそこに何十年も掛けて殆どアメリカ全州を回ったというお爺さんが入ってきた。父が施設医をしていた関係で知り合い、英語がペラペラだというので、10歳だったT君と私に英語を習えと言うことになった。
見た目も外人風の爺さんで雑談のような英語のレッスンを受けたのだが、受講態度が悪い?ということで、二三回でご破算になった。確かに発音は良かったような記憶がある。英語爺さんと呼んでいたのだが、半年ほどで大阪方面に身寄りが見つかり出所していった。
何でまたアメリカを放浪したのか、詳しいことは分からないが、今から思うとそういう風に吹かれる人が居る。99%が男性で、別に国外とは限らず国内を転々とし、何とか糊口を凌ぎながら風来に身を任せている。誤解を恐れず思い浮かぶ人を挙げれば森敦、野田知祐や開口健・・にもそうした気質を感じる。女性の場合は風来の質があってもどこかで根を下ろして家庭を持ってしまうようだ。
当院にも五六年に一人くらい風に吹かれ版木無く、当地に流れ着かれる方が居られる。何の縁か長逗留で、終の棲家となった方もおられる。