森の石松に喩えられても、関川夏夫さんは「ああそうね」と鷹揚だろう。うっかり忘れていた愛読著者のお一人だ。うっかりというのは正確ではなく、あまり読んでいるわけでもなし、どこかに微か愛読著者と公言するのに逡巡があった。
関川さんは鷹揚で大人風なのだが、結構細やかで不思議な屈折のある人で、あまり活字を読まれない方からは「へえ」とか「なにそれ」と言われそうな雰囲気を持っている。よく読まれる方からも一筋縄でない人と思われていそうだ。それには文筆家らしくない風貌と、常識がありながら常識に囚われない複視線も与っているだろう。
関川さんは誰か忘れちゃいませんか、寿司食いねえとはたぶん言わない人だが、森の石松的な軌道を回っている感じがする。周りには七十年代初めの混沌から生まれた一軍の人達が居る。呉智英、南伸坊、山口文憲・・・。だいぶん軌道が違うが立花隆、川本三郎、村上春樹などもその中に入りそうな気がする。
年代が近いせいか、そうした規格外?の我が道を行く人達に親近感を感ずる。中で関川さんは僅かな楕円軌道を緩やかに自転しながら橙色に鈍く光りながら回っているようだ。