絵や音楽の美しさというものは自然にわかるもののように思っていた。それは確かで自然にわかる以外にわかりようはないのだが、学ばなくてもわかるかと言われると、そうではないと答えたくなる。初心者が打つ碁も高段者が打つ碁もプロの打つ碁も碁には違いないのだが、同じではない。学ぶというのが適切な言葉かどうか自信はないが、高みに登れば遠くが見える。眼光を凝らせば紙背が見える。
元々絵が好きで、何の気なしに美術館を訪れていたのだが、洲之内徹を読んでから、絵の見方が変わった感じがする。州之内は毀誉褒貶の多い強烈な個性の持ち主で、独特の癖というか灰汁が滲み出ている比類のない人だ。彼の解説というか独断批評を読んで、目から鱗が取れた。
未読の方には劇薬かも知れないが、「気まぐれ美術館(新潮文庫)」を一度ご覧になるのをお勧めする。文章そのものが独立した不思議な作品になっているのだが、どう巡り巡るのかいつの間にか驚くべき解説になっている。
仙台に「州之内コレクション」を見に行く羽目になっても責任は持ちません。