駅前糸脈

町医者をしながら世の中最前線の動きを感知、駅前から所見を発信。

表現は内容と不可分

2016年04月24日 | 小考

            

 既に旧聞に属するのかも知れない。「保育園落ちた、日本死ね」というネットの発言が話題になり、国会でも取り上げられた。個人的には、この言葉遣いには、大人の発言としては違和感を憶える。そのために、取り上げられた問題に丁寧に立ち入ろうとするのをためらってしまう。

 勿論、こう表現したいほどの気持ちがあったのだろうとは想像できる。しかしそれをこう表現すると、怒鳴り合いと馬耳東風の旋風が起きるだけのように思う。又こうした表現だから取り上げられたとしたら、問題を深く粘り強く掘り下げる民力が落ちている現れとも感じる。

 問題を切り取ることは価値があり重要だが、問題を解決するには問題が様々なことと複雑に絡みあっているのを認め理解する必要があると申し上げたくなる。格差への怒りを発散させることなく収束させ、いくらかでも実りあるものにするにはどうしたらよいかを発信されてはどうだろう。

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親子は似ているが、氏より育ち?

2016年04月23日 | 小験

                      

 氏より育ちというけれども、親子はどこかどうしても似てしまう。氏と育ちがどの程度の割合で混合されるか諸説があるようだが、私の印象では平時は育ち乱時は氏が出やすい。勿論、諸に生みの親に育てられれば、どうしてもあちこち似てしまう。

 残念ながら、どうも悪いところが似やすい。どこがどう似ているかには女親の方が気付きやすく、男親は自分を棚に上げて、息子や娘が言い出したら聞かないしょうもない奴だなどとこぼすことがある。それは大変と相槌は打つが、内心あんたそっくりだと笑ってしまうことが多い。

 それに、隔世遺伝というのもあって爺さん婆さんに似ていることもある。まあ、遺伝で決めつけられては敵わないが、大いに参考にはなる。気質だけでなく、外見も似るのでぎょっとすることがある。臨終の席に家族が集まることが多い。以前にも書いたことがあるが、ちょっと鼻筋が通ってはいるが特別二枚目というわけではなかった爺さんを囲んで泣き腫らした眼の娘や孫娘が、みんなぎょっと驚くほどの美人でたじたじとした経験がある。婆さんも今は皺だらけだがどこかに昔美形の面影がある、昔は美男美女のご夫婦だったのだろう。

 面白いことに美女揃いの家の娘は、そうした顔を見慣れているせいか、自分のことをさして美人とは思っていないことが多い。要するに家族の中では並だからだろう。どうも目を見張る美人に先導をされると慣れないのであたふたしてしまう。ごく自然に玄関まで送って戴き深々とお辞儀をされ、なんだか恐縮したのであった。

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水は方円の器に従う

2016年04月22日 | 診療

               

 最前線で働いていると、色々な患者さんが回ってくる。中には大歓迎でもない患者さんも居られる。勿論、患者を差別しては居ないが、物わかりが悪く手の掛かる患者さんをこう表現するのは許されるだろう。なんたって門前払いをする医院もあるのだから。

 Hさん83歳のお婆さん、この頃迷子になるようになり、警察の厄介になったこともある。息子が医者に診て貰うように勧められ、年に一二回風邪腹痛で掛かっている何でも診てくれるS医院(元外科医)に診て貰えるかと電話をしたら他に回すことになると言われ、頭の画像診断に力を入れているM脳神経クリニックに電話をしたら内科に行きなさいと言われ、三番目に十五年前に掛かったことのある当院に電話が掛かってきた。受付が受けますかと聞くから「いいよ」と答えた。つい、電話を切ってから「大歓迎じゃないけどね」と付け足してしまった。気にするなと言われるかも知れないが、最初に電話を戴きたかった、少なくとも二回目には。医者も人間そうした感覚はある。

 一時間ほどして、息子に連れられた婆さんがやってきた。挨拶は出来る、身だしなみはもう一つで清潔な感じはしないが、体格栄養は良好だ。血圧が200ある、左右二度測定したが180以下には下がらない。勿論、何ともないから医者なんかには掛かっていないと宣う。長谷川式は15点で、アルツハイマー型認知症の可能性が高い。心陰影の拡大があり、高血圧を放置していたようだ。

 高血圧症があること認知症があること、幾つか検査をして確認は必要だが、ここで治療して行きますと話すと、息子はにっこりし、来て良かったと帰られた。そう言って戴ければ、こんなに嬉しいことはない。

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井山七冠達成

2016年04月21日 | 趣味

              

 いつかはやれるのではないかと見ていた、今回は出来そうな予感がした。昨日、遂にプロ棋士井山裕太が七冠(全タイトル)同時制覇を達成した。囲碁では前人未踏、将棋では羽生善治が唯一人20年前に達成している。勿論、最強の証明ではあるのだが、何かなければ達成できない偉業でさすがというか凄いというか、特別の人と感じる。

 囲碁将棋というか羽生井山というか、似ている所もあるが、大分違う印象もある。全くの個人的な印象だが、羽生はちょっと恐いというか孤高の天才、井山は親しみやすくどこか優しい天才かもしれない。

 私はNHK杯を観戦していて、石井邦生九段のファンになった。そのご縁で勝手に井山裕太を応援してきた。なんだか人ごとではなくとても嬉しく感じている。石井先生にもおめでとうございますと言いたい。

 本業も忙しく趣味が多すぎて(最近陶芸まで始めた)囲碁まで手が回らない。果たして七十の手習いで有段者になれるだろうか。週一二局では難しそうだ。しかし、どういうものか、解説者のお陰だろう、NHK杯は囲碁将棋とも楽しく見ている。講座の方はかったるくて見ていない、そういう心がけでは強くなれないだろうな。

 しかしながら、全てに通じるものがあるのではと思っている。それは美と楽、尤も人生には辛く苦しいことの方が多いと言われるかも知れない。 

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優しい不親切とぞんざいな親切

2016年04月20日 | 医療

  

 昨日は夏のような暖かさだったが、今朝の風は冷たい。不安定な気温と地震は関係ないのだろうか。こんなことは初めてと驚いてばかりいないで、ちっとは予知できないものかと思ってしまう。

 米原万里さんに「不実 な美女か貞淑な醜女か」という題の本があった。今の世では早世と言える彼女を非常に惜しむ一人であるが、こうした関係は世に多い。

 末期癌の母親を抱えるE氏、在宅での対応は出来ないというので、入院させてくれる病院を当たるようにと三つの病院を教えた。A病院は言葉遣いは丁寧で感じの良い対応であったが、紹介状などを揃えて面接に来なさいとハードルが高そうであった。B病院は事務的で入院できそうだが、経過状況によっては他の施設へ移しますよという返事だった。C病院は言葉遣いが荒く感じは悪かったが、主治医(私)の紹介状があれば受けてくれるということだったという。

 確かにA病院は、一体どういう基準があるのか分からないが、患者側の困窮度ではなく病院側のやりやすさ?で受け入れを決めるようで、何例も門前払いを受けている。B病院は緩和ケア病棟をもっており、病態と本人家族の意思できちんとした基準があり、それに沿った対応をする。C病院は患者が困っていればとにかく何とか対応しようという姿勢なのだが、どういうわけか職員はぞんざいな傾向がある。という日頃の印象通りの対応のようだった。

 勿論、E氏にも問題はあり、共働きで自宅での看取りは難しいのは分かるのだが、どうも腰が引けている印象がある。何とかどこかに頼もうという熱意を少しは介護に向けたらとも思うのだが、弱ってゆく人苦しむ人を看るという能力が乏しいようだ。これはE氏を責めるというのではなく、しばしば男性、希に女性にも認められる一つの性格で、介護看護力が乏しいタイプなのだ。さあ、どうするか。

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